伸びる組織の在り方

北尾 吉孝

ニュースイッチに今年6月、「伸びているベンチャーで必要な人、いてはいけない人」という記事がありました。筆者曰く、ベンチャー企業として「採用すべき順位」は「1―頭が良く、楽観的なヒト/2―頭が悪く、楽観的なヒト/3―頭が悪く、悲観的なヒト/4―頭が良く、悲観的なヒト」とのことでした。

先ず、上記記事では「頭の回転が早い」ことを「頭が良い」とされていますが、何を以て頭が良いとするかは議論の余地があるでしょう。あるいは1位にも2位にも「楽観的なヒト」がランクインしていますが、私は楽観と悲観が共存していなければ会社は上手くは行かないと思います。

何れにしても筆者のコメントは殆どナンセンスだと思われ、ベンチャーであれ何であれ同じような人間を集めた組織体というものは非常に弱いのです。東大法学部ばかりを集めていた旧大蔵省一つを見ても、過去において一体どれだけの問題が露呈してきたかということです。色々な経験や様々な才能を有する種々雑多な人間を集めて多様性を確保することにこそ、会社経営及び組織強化といった点で大きな意味があると思います。

要するに国家や企業の発展を考える場合、トップというのが如何なる賢才を集め、彼らを信用(信じて任せて用いること)し適材適所に配置して、その全ての人達にどんどん活躍して貰わねば、国や会社は決して大きくも強くもならないのです。『論語』の「為政第二の十二」でも「君子は器ならず…君子は単に物を盛るための食器のように一つのことだけに役立つようであってはならない」と孔子が述べている通り、様々な経験をし色々なことに通暁していて適応力が無いと駄目なのです。

中国の古典の中には孟嘗君(もうしょうくん)という食客3000人を養っていたと言われる人物がいますが、彼は誰も拒まず受け入れていたので、彼の周りには、例えば耳が恐ろしく良い人や鶏の鳴き真似が物凄く上手い人等々、多種多様な人材がいました。そして、ある時は耳の良い人が敵が追って来ていることを孟嘗君に知らせ、またある時には鶏の鳴き真似をすることで鶏の声を合図に開かれる関所の門を開けたというように、食客を上手に使うことで何とか難を逃れたというような逸話があります。

天は人間夫々に色々な能力やミッションを与えているわけで、やはり色々な人が集まり、皆で天から与えられたものを上手く活用して行く姿勢がなくてはなりません。そして、様々な意見に耳を傾けつつ凝縮し結論を下す大将は、常に明るい発光体でなければならず、どちらかと言うとネアカが良いでしょう。

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