「配達員はロボットじゃない」変わってきた再配達への意識

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

突然ですが、あなたはネット通販をする時、軽い気持ちで日時指定をしていないでしょうか?「日時指定は無料だし、いざとなれば再配達をすればいいから」ということで受け取る時の状況を想定せず、適当に決済ボタンを押していませんか?その軽い気持ちが今、「再配達問題」として連日大きく取り上げられています。

通販で注文した荷物を配達をしてくれるのは、ロボットではなく心の通った人間。そんな当たり前の事実を「頭では理解していても、実感がついてこない」人がほとんどでないでしょうか。私がEC事業者として、再配達問題について感じていることをお話をさせて頂きたいと思います。

再配達問題の一番の原因は「買い物客の意識の欠如」

「宅配→不在につき再配達」という流れは昔からあったのに、なぜ今になって問題として取り上げられているのでしょうか?その理由はネット通販の拡大と、人材不足が背景にあります。ずっと右肩上がりを続けるEC市場とEC化率(商取引全体の内、電子商取引が占める割合のこと)、中でも生活家電や文房具などはEC化率が高く、全体の3割がネットショップで買い物をしているというデータがあります。そしてネットショップを利用する人が増えると当然、商品を運ぶ物流事業者に再配達の負担がズシリ、ズシリと重くかかってくるわけです。

「宅配便全体の約2割が再配達で、それによって年間約9万人の労働力の消耗とCO2排出量が約42万t増加につながっている」と見る専門家もいます。これは一回で荷物の受け取りが完了していれば発生なかったはず「何も価値を生み出さないコスト」です。そのコストを払い続けているのは物流事業者と、その会社で働く配達員です。

じゃあ誰がそのコストを強いているのか?というと「まあ受取が出来なかったら再配達すればいっか(ポチッ)」という軽い気持ちで発送依頼を出すネット通販の利用客です。一人ひとりが「再配達を減らそう」という意識を持たなければ解決できる問題じゃないと思うんですよね。

「再配達は迷惑」を実感した経験

…ともえらそうなことをいっている私も人のことはいえません。

昔、筋トレにハマっていた私はネット通販でダンベルを注文しました。そして受け取り可能かどうかスケジュールもろくに確認することなく、「まあ多分大丈夫かな!」と平日の一番遅い時間帯の受け取り指定を入れました。結局、その日は帰宅が遅くなり、受け取りに間に合わずじまいとなりました。「あちゃー、やっぱりダメだったか~」そんな風に思いながら休みの日に再配達を指定しました。

指定した土曜日の時間に配達員はちゃんとやってきてくれました。私は当時、エレベーターのない低層マンションの3階に住んでいたので、配達には階段を使わなければいけません。ピンポーンとインターホンが鳴ったのでドアを開けると、そこには汗だくの配達員の方が立っていました。彼は「この荷物、すごく重いですね」というわけです。顔は笑っていましたが、目が笑っていません。その時、私はその言葉の意味を理解しました。この配達員の方は遠回しに私への怒りというか、不満というかを感じていると。当時の私はなぜそのように思われてしまうのかが理解できませんでした。

「配達は彼の仕事なのに、なぜそんな不満を持たれるのか?ネットで重いものを注文したらダメなのか??」と配達員から伝わってくる不満に対して、私は不満を持ってしまいました。でも今考えると配慮がありませんでした。真夏とは言わないまでも半袖でないと汗が流れる季節です。それを3階まで10kg以上あるダンベルを2回も運んでもらう事になったのは、完全に私の手落ちです。運んでくれるのは「ネットショップのシステムだ」という感覚を持っていましたが、実際にドアの前に立って運んでくれたのは汗が流れる人間だったわけです。

「再配達を減らそう!」が広がってきた

そんな再配達問題に改善の兆しが見えてきました!

ECを利用する際、「到着日時を指定し、その時間帯は在宅すようになった」と回答したのは59.2%(「非常にあてはまる」「あてはまる」と回答したユーザーの合計)。また、「配達員に『おつかれさまです』などと声がけするようになった」と回答したユーザーの割合は、「非常にあてはまる」と「あてはまる」の合計で54.6%に上った

引用元:ネットショップ担当者フォーラム

このように再配達が起こらないよう、5割以上ものネットショップユーザーがいるとのことで意識が変わってきましたね。また、「お疲れ様」と配達員に声をかける人も増えているとのこと。これは素晴らしい傾向だと思います!

上述の通り、私も過去に再配達で配達員の方にご負担をおかけしてしまいました。今では心を改め、深く反省しました。再配達を出さないよう、一発で受け取りができる日時指定をして、配達の際は「ありがとうございます!」とお礼をいうようにしました。私一人がやっていることは小さな事かもしれません。でも、みんなが意識を変えれば社会にインパクトを与える大きな動きになります。

考えてみれば再配達を出してしまう理由って本来何もないと思うんですよね。「できるだけ早く荷物を受け取りたい!」という気持ちから、受け取りができるかわからないけど「イチかバチか最短配送→再配達」のパターンってかなり多いと思います。でも慌てて受け取りをしたものの、その後すぐに買ったものを使ったりするかというとそうでもない場合も多いんですよね(私も受け取ったダンベルの箱を開封したのは、受け取りから数日経ってからでした)。

再配達問題は完全に0にすることはなかなか難しいかと思います。でもこの問題はユーザーの意識を変えるだけでお金をかけずに事態を改善できるものです。

配達をしてくれているのはロボットではなく、人間なんだ」と考えて受け取り日時指定をするようにしましょう!

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。