1歳違うだけど、投票率が20ポイント近く変わる状況
総務省が衆議院選挙の10代の投票率(抽出調査)を発表した。
総務省は24日、今回の衆院選で初めて選挙権を得た18歳と19歳について、抽出調査による投票率(小選挙区、速報値)を発表した。18歳は50.74%、19歳は32.34%で、18歳と19歳を合わせると41.51%。いずれも全体の投票率(53.68%)を下回った。18歳選挙権が導入された昨年7月の参院選と同様、18歳より19歳の投票率が目立って低い。 毎日新聞記事より
全体の投票率を下回ったという点に着目する方もいるだろうが、むしろ着目すべき点は
18歳と19歳の投票率の違いである。
1歳変わるだけで、投票率が20ポイント近く変わるという状況は普通ではない。
実は同様に18歳よりも19歳の方が投票率が高い現状は昨年の参議院選挙でも見られているが、その時は10ポイント以下の差である。
住民票を移している一人暮らしの18・19歳はわずか3割
ここまで大きく投票率の差が出る原因は間違いなく住民票の状況による。
ご存知のとおり、投票は住民票のある自治体で行うこととなっている。
しかしながら、実家を出て、親と暮らしていない18歳・19歳のうち、住民票を現居住地に移している割合は3割を下回る。
住民票を移していないこと自体はもちろん法的に問題なのだが、現状をみれば移していない割合の方が多く、法が現状についていっていない状況がある。
みなさんも、大学生時代に一人暮らしをしていたが住民票を移していなかったり、そんな知り合いを知っていませんか。
投票率の際の問題は、このような住民票を移していない一人暮らしの人がどうやって投票を行うことができるかである。
方法は2つ
1:住民票のある自治体(実家)に戻り投票を行う。
2:不在者投票制度を利用する。
1に関しては、現居住地と実家の距離により投票の困難さは変わる。そして、2に関しては、郵送でやり取りを行う必要があるので、すくなくとも数日かかり利便性がぐっと下がる。
つまりは18歳の高校生で実家ですんでいる人に比べて、19歳の大学生で親元を離れて一人暮らしをしているが住民票を移していない人の方が、投票するためのコストはかなり上がる。
そして、その結果、投票行動への意欲は変らなかったとしても投票率はぐっと下がるのだ。
18歳と19歳の投票率の差が拡大した理由は選挙の時期
18歳と19歳の投票率の差が広がった。昨年の参議院選挙では10ポイント以下だったが今回の衆議院選挙では約20ポイントとなっている。
その最大の理由は選挙の時期である。
昨年の参議院選挙は投票日は7月であったため、18歳に占める高校生の割合はかなり少ない。そして、その分住民票を移していない一人暮らし大学生の割合も高くなっていたと想定される。
対して、今年は10月末の選挙であったため、18歳に占める高校生の割合はざっと半分ぐらいとなっている可能性が高い。つまりは今年の方が、住民票を移していない一人暮らしの割合の差が18歳と19歳の間で多くなったので投票率の差が開いた可能性が高い。
ちなみに高校生世代の18歳の投票率はすごく高いとの調査が去年の参議院選挙の際にも出ている。
全国的な調査はないもののいくつかの府県では独自に調査を行っており、いずれも18歳全体の投票率よりもかなり高い数字が出ている。
今回も昨年同様に高校生世代の投票率が高いと考えられ、その結果18歳・19歳の投票率の差が開いたとも考えられる。
政治が1年間放置していた住民票と投票率の問題
ここまで説明してきた住民票を移さないことによる投票へのコストの増加と、投票率の低下の関係に課題がある事は以前より指摘されており、政府も把握している。
昨年度末には総務省にて「主権者教育の推進に関する有識者会議とりまとめ」の文書の中でも以下のように住民票の問題が取り上げられている。
自分自身もこの有識者会議のメンバーとしてこの取りまとめに参画し、住民票の課題については言及していただけに、その後何の進展も見えない状況に悔しさを感じる。
国会での議論と状況への対応を強く望みます。
選挙権と住民票の問題に関しては、一人暮らし学生への対応が自治体ごとに異なるといった課題もある。
詳細については自分の過去記事をご覧ください。
【一人暮らし学生と住民票問題】実態と4つの問題と検討すべき今後の対応(原田謙介) – Y!ニュース
一刻も早く、国会の中での議論を進めていただき、現状への対応を行っていただければ幸いです。
在外邦人に対してのインターネット投票の検討も行われるとのニュースもあるので、国内でもインターネット投票の導入の議論が進んでくるとは思う。
しかし、1年2年で結論の出るテーマではないかなと思う。
他のアプローチとしては、せめて国政選挙の際は全国どこの投票所でも投票できるような仕組みを構築すること。
これも、もちろん時間がかかることではあると思う。
せめて、名簿登録地の選挙管理委員会への投票用紙を郵便ではなく、オンラインで請求できるようにすること。(一部の自治体はすでに行っている)
あるいは病院での不在者投票がそうであるように、学長を責任者として大学での不在者投票制度を可能とすること。
もちろん、逆に住民票を移すことを徹底させるというアプローチもあるかもしれない。
当然、居住実態のある地域に、住民票を移動することは法で定められており、学生はそれを怠っているにすぎないとも言える。
大学の寮などでは住民票の移動を条件としているところもある。
ただ、実態は過半数の一人暮らし大学生が住民票を移しておらず、法が実態とかけ離れている現状があることを考慮したうえでアプローチ方法を感がる必要がある。
この住民票を移していない一人暮らし大学生の投票に関しては、現状、総務省内だけの解釈変更ではどうにもならない状況だと思っており、一刻も早い議論をお願いします。
投票意欲がある若者の行動を阻む状況を放置し続けるわけにはいかない。
引き続き若者と政治をつなぐために頑張ります。
編集部より:この記事は、NPO法人YouthCreate代表、原田謙介氏のブログ 2017年11月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は原田氏のブログ『年中夢求 ハラケンのブログ』をご覧ください。