脳科学者に聞いた!ToDoリストの手書きに意味は無い

尾藤 克之

写真は茂木健一郎氏。wikipediaより。

日本人は脳科学が好きなようである。そして、脳科学ブームは数年おきに到来する。過去には『脳内革命』『バカの壁』『脳を鍛える大人の計算ドリル』などのベストセラーも多い。今回は、『膨大な仕事を一瞬でさばく 瞬間集中脳』(すばる舎)を紹介したい。著者は脳科学者としてメディア出演も豊富な、茂木健一郎氏。

あなたは「ToDoリスト」をどのように管理しているだろうか。きっと大半の人は、手帳やメモに書き出していると思われる。では実際にそのリストを計画通りに処理できているだろうか。「それがなかなか難しくてね!」。そう悩んでいる人が少なくない。

手帳やメモでは管理ができない

――茂木氏によれば、これはあたり前のことのようだ。いったん紙の上で整理しても、仕事をするうちに状況は変化する。例えば、上司から仕事を頼まれたり、同僚や部下から相談ごとを持ちかけられたりと、想定外のタスクが飛び込むのは日常茶飯事だ。

「1人が担当する仕事は、単純作業もあればクリエイティブな業務もあり、スパンも短期的なものから長期的なものまで、実に多種多様です。それをきっちり厳密に計画立てて、ToDoリストの通りに進めるのは、現実的に不可能でしょう。私も一時期、当時流行していた高級システム手帳を使っていたことがあります。」(茂木氏)

「やるべきことを紙に書いても、次に開いて見返す頃には状況が変わってしまい役に立ちませんでした。さらにもう1つ、手帳やメモを使うデメリットがあります。頭の中身を紙に書き出して外部にアウトプットすると、人間はそれに頼るようになってしまうことです。To Doリストにないことが起こるとパニックになるのです。」(同)

――その結果、どの仕事にも集中できず、やるべきタスクはどんどん溜まってしまう。そうなれば、To Doどころかスピードと質の両方が下がってしまうことになる。

「仕事で成果を出すには、想定外のことが起きても柔軟に対応できる臨機応変さが求められます。そう考えると、アップデートしにくい手帳やメモでTo Doリストを管理するやり方には、限界があると言わざるを得ません。では、どのように『やるべきこと』を管理すればよいのでしょうか。私が実践している方法をお教えしましょう。」(茂木氏)

「脳内に随時変更可能な『脳内To Doリスト』をつくることです。手帳やメモには一切書き出しません。頭の中でなら、状況の変化に合わせて、刻一刻とリストを書き換えられます。だからその瞬間ごとに『今、最優先でやるべきこと』だけに集中できるのです。リスト と言っても、手帳に整然と書き出すのとは少し違います。」(同)

1日の流れをイメージでとらえる

――茂木氏は1日の仕事や勉強の流れを映像で思い描くそうだ。そして常に「今は流れのどこにいて、何をやっているのか」を意識し、「次は何をするか」を判断する。しかし、これはかなり難しい方法ではないか。コツはあるのだろうか。

「例えるなら、常に頭の中で、魚のようにやるべきことを泳がせている感覚です。漁師はその日の潮の流れを読んで、『今日はどこに魚がいるか』を判断します。それと同じように、その時 で仕事の流れを読み、『今はこのやるべきことに集中しよう』と判断するのです。素早く見極めることが大切です。」(茂木氏)

――さらに、見極めができたら、「脳が喜ぶノイズ」を与えるべきと主張する。脳の性質を活かしたテクニックがあるようだ。

「ラジオを聴きながら仕事をすることをおすすめします。ラジオの音は予測が不可能です。これは良質なノイズになります。知っているCDや自分で選曲した音楽は予測可能なのでノイズにはなりません。職場も同じです。少々騒がしい環境でも『脳を鍛えるのにうってつけの職場だ!』と考えれば集中できるものです。」(茂木氏)

――さて、本日のまとめにはいりたい。あなたのまわりで、スケジュール帳を使わない人がいたら、それは「脳内To Doリスト」が稼動しているともいえる。脳の仕組みを理解すれば、仕事を効率的に進められる可能性が高まる。脳の特性を活かし、生産性を上げる方法を知りたい方には一読をおすすめしたい。

参考書籍
膨大な仕事を一瞬でさばく 瞬間集中脳』(すばる舎)

尾藤克之
コラムニスト

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