香川県の挑戦、うどん県はフルーツ県になれるのか?

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

香川県といえば「讃岐うどん」という脳裏にこびりついて離れない強烈なイメージがあります。私は昔、香川県に讃岐うどん巡りへいったことがあります。普通のうどん屋さんだけでなく、製麺所にもいきそこではできたての讃岐うどんを食べることが出来ました。また、「讃岐うどんソフト」なるものまでありましたね(怖くて食べられませんでしたが…)。旅行に行く前も後も、私の中では「香川県=うどん県」というイメージがあります。

そんな香川県が「フルーツのブランディング」を目指す動きがあることをご存知でしょうか?県をあげて「さぬき讃フルーツ」というブランドの立ち上げ、ブランディングに取り組んでいます。

これにはフルーツ王国、熊本県のフルーツギフトでビジネスをしている私は思わず「おおっ!」と声をあげそうになりました。

2015年にはテレビコマーシャルの制作も(香川県サイトより:編集部)

香川県が果物のブランディングに本気になった ⁉︎

これまで香川県の特産品に「果物」は含まれていませんでした。

香川県で有名な特産物といえば小豆島のオリーブオイルやそうめん、それからお醤油に讃岐うどんといったもので、麺類にちなんだものばかり。果物は影も形もありません。実際、これまでの香川県が育てている果物はなくはないですが、特に全国区として目立つものではありません。果物ナビの掲載している農林水産省のデータによると、香川県が全国シェアを取っている果物はせいぜい次のようなものです。

すだいだい(柑橘)…全国2位

びわ…全国3位

データ引用元:果物ナビ 香川県の果物ランキング

その他の果物の生産量やシェアは他県に圧倒的な差をつけられています(そしてこの2つのフルーツも全国的な収穫量が少ない「マイナーフルーツ」です)。

そんな果物らしさのなかった香川県ですが、ここに来て県をあげてシャインマスカットや、不知火(デコポン)といったフルーツでブランディングに取り組んでいます。さて、これまでは果物ブランディングをJAがやっていました。「JAが定めた基準を満たす果物はこういう名前をつけていいよ」という具合で、例えば「不知火」は「JAから出荷され、糖度13度以上でクエン酸1%以下であれば「デコポン」と名称を使っていい」ということになっています。JAの基準を満たすものは「デコポン」、満たさないものは「不知火」という名称で売られているわけです。

しかし、今回のように都道府県が認定した生産者が一定の基準を満たしたものに対して、名称の使用を認める、というのを私は初めて聞きました。これには「香川県が本気で果物でブランディングしていこうとしているな」と感じます。

不動の王者、熊本のデコポンの座が脅かされるか ⁉︎

不知火(デコポン)という柑橘果物は、元々熊本県の不知火町で生まれました。いまや全国各地で生産されていますが、先ほどいった通りJAから出荷されたもので、一定の基準を満たす不知火だけを「デコポン」と名乗っています。基準を満たさないものはデコポンと名乗れませんが、名前にかわいさを持たせるために「デコみかん」「ひめぽん」「ポンダリン」とつけているところもあります。

でもやっぱり知名度はデコポンが圧倒的ですね。Googleで検索してみたところ、次のような結果になっています(2017年5月15日時点)。

デコポン…約2,020,000 件

不知火 果物…約 202,000 件

デコみかん…約 404,000 件

ひめぽん…約 510,000 件

ポンダリン…約 1,550 件

※「不知火 果物」としているのは、「不知火」で検索すると妖怪とか、アニメやゲームまで拾ってしまって1,500万件を超えてしまったためです。

これを見ると「デコポン」は品種名である「不知火」を超える知名度を誇っていることが分かります。ブランディングのために覚えやすく、いいネーミングをすることで元々の品種名以上の知名度を持たせることができるということがお分かり頂けるでしょうか?

香川県はこの不知火に、オリジナルのブランド名称をつけようとしています。気になるその名称は現時点ではまだ明らかにされていません。個人的なイメージでは「デコさぬき」とか「さぬきポン」みたいになるのかも!?と勝手に予想しています。「ネーミングセンスないなあ。そんなのありえねー」と思われたでしょうか?

ちなみにこれまでさぬき讃フルーツはキウイフルーツに「さぬきエンジェルスイート」とか「さぬきキウイっこ」、いちごに「さぬきひめ」といった名称をつけていますので、不知火も同じような名称が来るかな?と私は予想しています。

柑橘王国の愛媛に出来て、香川に出来ないことはない

果物のブランディングって一にも二にも「味」なんですよね。

静岡県袋井市で作られるマスクメロンは「クラウンメロン」とされ、都心の高級百貨店で1玉数万円という値段がつきます。福岡のあまおうも他のいちごに比べると値段は高く設定されています。熊本県のデコポンも同じで「不知火」「デコみかん」といった名称に比べると、値段は高めに設定されています。

果物がブランドになるのはネーミングなどもありますが、やっぱり「品質がいい」からなんですよね。他よりも品質がいいからファンが付き、それがブランドになるわけです。これまで香川県は麺類の印象が強く、実際に特産物は麺類にちなんだものが多かったのですが、香川県はフルーツの栽培にも適していると思うんですよね。

というのもすぐお隣の愛媛県を見て下さい。こちらは清見、いよかん、ポンカンを始めとした柑橘果物は軒並み収穫量の全国ランキングは一位です。みかんといえば和歌山県のイメージもありますが、愛媛県も多種多様な柑橘果物で数多くの1位を取っている紛れもない「柑橘の王者」。それには気温や日照時間、降水量など地形上の特性も味方をしているでしょうが、江戸時代から続く長い歴史が今の愛媛県を柑橘の王者の地位に押し上げています。

これから香川県がデコポンに対抗できるような不知火のブランディングに成功するのか?それはまだ分かりません。ですが、本気を出した香川県が「うどん県」のイメージを払拭し、全国に名を馳せるフルーツ王国になる日は本当にやってくるのかもしれません。これからの香川県のフルーツブランディングから目が離せませんね!

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。