【映画評】ジグソウ:ソウ・レガシー

街で複数の死体が発見される。おぞましくも特徴的な惨殺死体から、捜査線上にかつて人々を震撼させたジョン・クレイマーの名前が浮上する。“ジグソウ”の名で呼ばれ、凄惨な死のゲームを仕掛けた人物だが、彼は十数年前にこの世を去っていた。誰が殺人ゲームを仕掛けたのか。ジグソウの後継者、崇拝者が存在するのか。犯人の正体とその目的とは。様々な憶測が飛び交うが…。

殺人鬼ジグソウが仕掛ける殺戮ゲームを描いて大ヒットを記録したシチュエーションスリラーシリーズの最新作「ジグソウ:ソウ・レガシー」。一連の事件の犯人だったジグソウことジョン・クレイマーの死から10年後に、新たなゲームの幕が切って落とされる。2004年の第1作があまりにも強烈だったためか、それを超える作品となるとなかなか難しいが、7年ぶりの新作であるこの第8作には、死んだはずのジグソウが10年後に再び姿を現すという、反則技に近い驚きがある。だが、その驚きには大掛かりな仕掛けがあって、その仕掛けの内容を知れば、10年後の登場の真意、巧妙な伏線、整合性に気付くだろう。人気シリーズ再始動の役を引き受けたのは、双子の監督、スピエリッグ兄弟だ。

5人の男女が目覚めると、そこは見知らぬ空間。頭にバケツ、首と壁をつなぐ長い鎖、壁には無数の電動のこぎり刃。例によって、凝りに凝った残虐シーンがてんこもりだが、その死のひとつひとつに、登場人物たちが隠す嘘と罪があり、姿が見えない殺人鬼は、告白と犠牲を要求する。グロテスクな死に様の中でも、ラストのそれはビジュアル的にも強烈だ。とっくの昔に死んだはずのジグソウの復活という不可解な展開も含めて、今までになく謎解きミステリーの要素が強い。こじつけに見えなくもないこの復活劇は、劇中に登場するジグソウ心酔者だけでなく、映画ファンの多くがジグソウと彼のゲームを待っているということなのだ。シリーズは、人々が命の価値に気付くまで続くのだろう。
【60点】
(原題「JIGSAW」)
(米・カナダ/ピーター・スピエリッグ、マイケル・スピエリッグ監督/マット・パスモア、カラム・キース・レニー、クレ・ベネット、他)
(トリッキー度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年11月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。