1080兆円の財政赤字に個人投資家が対応する3つの方法

財務省が11月10日に発表した統計によれば、2017年9月末時点の日本政府の借金は1080兆円となり、過去最大を更新しました(写真)。

社会保障費が膨らみ、今後も財政赤字は拡大が続く危機的な状況ですが、大した問題ではないという意見もあり、何を信じて良いのかわからず混乱している投資家も多いようです。

財政赤字に関して、楽観的な見方をしている人たちの根拠としては、次のようなものがあります。

1.日本の国債の保有は国内が90%以上

政府が発行している国債の保有者内訳をみると、国内の民間金融機関と日銀で90%を超え、海外からの借り入れは1割以下です。国内の資金が潤沢に存在し、運用先が見つけにくい中では国債から資金が流出する可能性は当面ないという見方です。

2.日本は世界最大の債権国で個人金融資産は1800兆円

日本の対外純資産は339兆円と世界最大で、2位ドイツの190兆円強を大きく上回っています。また日本の家計が保有する個人金融資産が1800兆円あり。政府の債務を差し引いても700兆円の資産が存在する計算になります。さらに、日本国政府は借金と同時に資産を保有しており、これを相殺して考えれば、実質的な債務はそれほど大きくないとも言えます。政府部門の赤字だけを取り出して問題視するのは、全体を見ていないという考え方です。

3.日本政府は徴税権を持ち、日銀は通貨発行権を持っている

日本の財政赤字は、政府が徴税権を持っている限り増税によって最終的に解決することは不可能ではありません。また日銀には通貨発行権がありますから、通貨を発行すれば財政破たんすることは無いという理屈です。

確かに、日本の財政赤字は日本の個人金融資産が支えており、身内から借金をしているようなものと考えられるかもしれません。しかし、資金調達先が国内だからといって借金が返済不要と言うわけではありません。また、政府に資産があって相殺できるといっても、借金と相殺できる資産ばかりとは限らず、限界があります。
通貨発行権があれば、財政破綻する事は理論上ありませんが、財政赤字の拡大によるインフレリスクが消えることはありません。

さらに現状の財政赤字は、日銀の国債買い入れによって支えられている面もあります。400兆円を超える国債を保有している日銀が抱える金利上昇リスクは高まっており、これらを踏まえると私は楽観的に捉えてはいません。

財政赤字はこれからも減る事はなく、増え続けていくことでしょう。いずれ、どこかの時点でマーケットからの強烈なメッセージが送られてくる。そうなる前に、今から自分自身の資産を守るために、最悪のシナリオを想定した先手を打っておきたいものです。

私自身は、外貨資産の保有、リスク資産へのシフト、そして借入の3点セットで対策を進めています。その具体的な方法を11月25日のセミナーでもご案内したいと思います。

時間はそれほど残されていません。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年11月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。