スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が11月14日にベネズエラが一部の債務を履行していないことが判明したとして「選択的デフォルト(SD)」にあることを公表した。これは国家破綻に繋がる入口に立ったようなものである。
今回のデフォルトに繋がる道を歩んで来たベネズエラに関して、以下に二つの質問と回答を用意した。
◎ 給与が上昇することに国民が恐れを抱く国はどこだ?その答えはベネズエラ。
給与の上昇に連動してインフレ率が上昇するからである。IMFは今年のベネズエラのインフレを720%と予測している。マドゥロ政権になってからの累積インフレは2000%にまで上昇しているという。
過度のインフレ上昇にうんざりしている野党議員ミゲル・ピサッロは「1年間に5回も給与を上げるのは誇りにはならない」とツイートしたほどだ。
◎ 世界で原油の埋蔵量が最大の国であるのに、経済破綻している国はどこだ?その答えもベネズエラ。
11月3日、マドゥロ大統領は債務の再編を担当閣僚に指示した。国債の償還を始めとして、これから迎える債務の返済ができなくなっているのである。
チェベス前大統領が1999年より始めて、それを受け継いだマドゥロ大統領によるボリバル社会主義革命が現在の無様なベネズエラだ。
チャベスが政権に就いた時に存在していた民間企業数から現在も存続しているのは僅かにその3分の1だという。理由は政府が企業に介入して、政府の方針に従わない企業は片っ端から国営化して行ったからである。現在まで国営化された企業は690社。そして、国営化された企業には社会主義が浸透し、従業員は公務員となり、採算ベースに乗らない企業に変身した。しかも、生産量は民間経営の時の半分以下になっているという。
ベネズエラ石油公社の場合、現在の産油量は日量270万バレル。20年前と比較して生産量は20%の減少だという。その一方で、従業員は5倍に増えて175,000人となっている。チャベスは企業経営に無知な軍人らを経営陣に加え本来の企業経営から乖離。そして、縁故関係を利用して雇用も増えて行った。
その結果、コストの上昇を導き、生産量は後退し、チャベス信奉者への賄賂は横行するようになって、結局430億ドル(5兆1600億円)の赤字を抱える企業となったのである。
政府の方針に従わず、利潤追求を求めた民間企業の経営者は暴利を貪っているとして政府は彼らの利潤追求を法的に規制した。その結果、経営者はやる気を無くし、経営を続けるよりも廃業の道を選んだ。
このような事情から、企業の数が大幅に減少するという事態になったのである。企業が減少すれば生産品も減少する。原油の価格が高い時は利潤も充分に出せて政府の財政も豊かで、国内で不足している物資は輸入に頼ることが出来た。しかし、原油価格が下落すると、政府の財政事情も悪くなる。その結果、外貨不足から輸入も制限せねばならなくなった。そこで市場では物不足が発生するという事態になったのである。
現在、80%の物資が不足しているという。そして外貨の保有高は最高時と比べ64%の減少。
ベネズエラのハイパーインフレに対応する為に、政府は仕方なく紙幣の増刷を招く結果となっている。2012年末に3825億1500万ボリバルを市場に流通させたが、2017年の半ばまでに40兆6000億ボリバルまで紙幣の増刷となっているという。
外国での債務は1999年が260億ドル(3兆1200億円)だったのが、現在1500億ドル(18兆円)にまで膨れ上がっているという。しかも、この債務にはロシアと中国からの融資も含まれている。
ハイパーインフレである上に、この規模の負債を抱えて込んでいると外国からの資金の融資はまず望めない。ましてや、ボリバル通貨はベネズエラから一旦外に出ると全く信頼されない通貨となっている。そして、デフォルトになると外国からの融資は完全に途絶える。
マドゥロ大統領から議席を剥奪されたマリア・コリナ・マチャド前議員が11月3日の演説で次のように語った。「チャベスとマドゥロの政権中に我々の負債は6倍に増えた」「国民が空腹を感じている時に、彼らは過剰なほどに富を盗んで行った」「外国での負債の98%は彼らが抱え込んだものだ」「19年間の通貨の切り下げは35万7000%にまで到達している」と述べた。
更に彼女は、「チャベスが政権に就いた時、原油は1バレル8ドルだった」「それが140ドルまで到達し、今、50ドルになっている」「原油の需要が高まっていた時に、彼らは蓄積されていた富を盗み、生産能力を破壊させたのだ」と述べて破産宣告を導いている二人の指導者を痛烈に批判した。