森友学園に格安で国有地が売却された問題で、11月16日付の毎日新聞によると、
「国有地での建設工事を受注した業者が地中ごみの撤去費を約9億6000万円と見積もり…」
としている。
これは、国側により算定され値引きの根拠とされた撤去費約8億2000万円に近似する内容だ。つまり国側の主張が一定の客観性を帯びた事になる。
地中ごみ撤去費用の見積り額の妥当性が問われるのは、値引き後の価格の適正さが問われているからだが、そもそも「適正価格」とは何なのだろう。
昔から一物四価(五価)と言われる土地の価格だが、民間の宅地建物取引業者に「適正価格とは何だ?」と問えば、土地取引の現場では間違いなく「実際に取引される価格」と答えるだろう。
どんな客観的評価方法を用いて土地の評価額を算出しようが土地の価格には「個別の要因」が影響し、売主買主の同意をもって実際の取引価格が決定する。
つまり、「売れた価格」こそが適正価格となり「相場」を形成していく基になる。
今回の当該国有地はまず森友側に「賃貸」された後、新たな地中ごみの存在を受け改めて売買価格の交渉がなされた。賃貸される以前に将来の売買価格を決めていたとしても、その売買の取引条件の不確定要素(土地の瑕疵の発見や買主の資金不足による債務不履行等)が払拭されることはないし、ましてや将来の買い受けを「絶対条件」にして買主に当該土地を賃貸するなど、一般的な民間の土地取引ではあり得ない。(※一部の特殊な借地権売買等は除く。)
土地取引の現場を知る人間なら、この様な契約を結べば土地の賃貸借開始後の価格交渉が「買主に有利」なものにならざるを得ないことなど容易に予測できる。投資目的の場合は別として、購入者本人が自由に使えず、さらには占有者がいる土地など第三者に売れるはずもない。
「忖度の有無」や「ごみ撤去費見積額の蓋然性」ばかりが論点になっているが、この土地取引の公平性を最初に乱した「賃貸した土地を必ず買い取らせる約定」にこそ瑕疵があったのではないだろうか。
ちなみに、売主買主のどちらか一方に不利な内容の契約において決定された価格を「適正価格」とは呼ばない。
高幡 和也(たかはた かずや) 宅地建物取引士