保育園経営者で、政府有識者会議の委員の駒崎です。
幼児教育の無償化から認可外保育所を外す、という発表をして世論から大きな反発を食らった政府は、数日で方針を転換しました。
良かったなぁ、と安心していたら、その「撤回」の内容が示され、非常に驚いてしまいました。
認可外保育、補助金支給へ 月額2.57万円を上限(朝日新聞)
幼児教育の無償化策で、政府が認可外の保育施設を原則すべて補助金支給の対象とする方向で検討していることがわかった。企業が主に従業員向けに整備する「企業主導型保育所」や、夜間も預かる「ベビーホテル」も含まれる。利用者に月額2万5700円を上限に支給する方向で与党と調整し、12月上旬に決定する。
これは一見良いことのようですが、非常に大きな問題をはらんでいます。
認可外保育所は「無償」にならない
平成24年度の厚労省調査によると1歳児の保育料は、事業所内保育所37%、ベビーホテルの94.3%、その認可外保育所の89.4%が、3万円以上です。
つまり、2万5700円が政府から支給されても、無償にはならないのです。
認可に落ちて、仕方なく地元の認可外保育に預けることにした親は、認可は無償にも関わらず、費用負担までしないといけなくなります。
まさに弱り目にたたり目。泣きっ面に蜂です。
保育格差を拡大
繰り返しますが、これは預けられなかった親が悪いわけでは全くなく、保育園を必要量までつくれない、国と自治体の責任です。
にも関わらず、なぜ預けられない親が罰せられるような政策を出してくるのでしょうか。理解に苦しみます。
認可外保育所も、月額10万円を超えるような超高級認可外保育所をのぞいて、認可と同じように無償化していくべきでしょう。
でなければ、非常に不公平な制度を生み出すことになります。
優先順位が違う
保育・幼児教育を無償化するのは、基本的には良いことです。全ての子ども達に保育・幼児教育は必要だからです。
しかし、今は量が足りない、という状況なのです。普通に考えて、「じゃあまず、必要な数だけちゃんとつくりましょうね」となるはずです。
にも関わらず、無償化が先行して行われるのは全く辻褄があいません。
政府目標の根拠は不透明
「いや、保育量も確保します。5年で32万人分確保する予定を、3年に前倒ししました」と政府は胸をはります。
しかし、この32万人はどこから出てきたのでしょうか。民間シンクタンクの計算では、88万人です。そして、根拠式を出してほしいと再三厚労省に言っても、口頭でモゴモゴ言うだけで、肝心の途中計算式がいつまでたっても出て来ません。
もしかしたら、根拠があやふやなまま、政策を立てているのではないでしょうか。そうだとしたら、おおごとです。
保育園が足りないのに、無償化でさらにニーズが増えて、保活は激化。保育格差は大きくなり、怨嗟の声が市中に満ち溢れるのは、火を見るよりも明らかです。
ぜひ国会では、こうした政府のエビデンスに基づかない政策について与野党問わず質問していただき、しっかりニーズの分だけ保育園をつくれる財源の確保も並行して進められるようにしていくべきです。
国民は今こそ、政府にしっかりと注文をつけていくべきなのです。後世に今以上の保活地獄を生まないためにも。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年11月17日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。