クリスマス市場と地球儀と「猫」の話

ウィ―ン市庁舎前広場で18日、慣例のクリスマス市場が開かれた。今年はフォアアールベルク州から運ばれた25メートルの高さのクリスマス・ツリーにホイプル市長が同日夜、電飾を灯した。クリスマス・シーズンのオープンだ。来月24日のクリスマスのイヴまで300万人余りの訪問者がクリスマス市場を訪れるとみられている。ウィ―ン市庁舎前広場のクリスマスはその規模で欧州一だ。市庁舎前広場のクリスマス市場を一目見ようと毎年、世界各地から多数の旅行者が集まってくる。

▲ウィーン市庁舎前のクリスマス市場風景(2017年11月18日撮影)

▲ウィーン市庁舎前のクリスマス市場風景(2017年11月18日撮影)

ウィーンでは今年、オープンされるクリスマス市場は20カ所だ。クリスマス市場では子供連れの夫婦や若いカップルが店のスタンドを覗きながら、シナモンの香りを放つクーヘンやツリーの飾物を買ったり、クリスマス市場で欠かせない飲物プンシュ(ワインやラム酒に砂糖やシナモンを混ぜて暖かくした飲み物)を飲む。クリスマス・シーズンの雰囲気はいやが上にも盛り上がる。

2015年や昨年は難民殺到やテロの多発でゆっくりとクリスマス市場を楽しむ雰囲気はなかったが、欧州がここにきて難民受け入れ制限と国境監視の強化で一致したことで難民申請者は激減し、難民の殺到という峠は一応過ぎたと受け取られている(例外は、北アフリカからボートで難民たちがイタリアに殺到)。

欧州経済もようやく回復の兆しを見せ、失業者数も減少してきたというニュースが流れてくる。市場で景気よく出費できる市民と市場の雰囲気を楽しむだけで、懐の財布の紐は固い市民も多い。ただし、両者とも「いよいよクリスマスだ」といった高調した気分になる点では変わらない。欧州の人々にとって、クリスマスはやはり1年で最大のイベントだ。

同時期、ドイツのボンで開催されていた国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)が18日、閉幕したばかりだ。パリ協定で合意した内容に対するフォローアップ会議だ。2020年以降に取り組む温室効果ガスの削減目標などについて話し合われた。
地球の温暖化はもはや現実的脅威となってきた。一方、トランプ米大統領はパリ協定から離脱を主張するなど、地球温暖化への対策で国際社会コンセンサスがまだ出来上がっていない。経済発展と環境保護の両立をどのように実現するか、先進諸国ばかりか世界の全ての政治指導者が頭を痛めているテーマだ。

▲地球儀を見つめる猫(2017年11月、撮影)

▲地球儀を見つめる猫(2017年11月、撮影)

先日、猫(ミアティラ)を飼っている友人宅を訪問した。その時、猫は電気が灯された地球儀をジーッと見ている。その後ろ姿が可愛らしいので写真を撮った。猫はそんなことに全く関心を示せず、地球儀を見つめ続けている。
そのシーンをみていると、次第に深刻な思いが湧いてきた。大げさに言うと、地球は大丈夫だろうか、と考えてしまったのだ。こちらの重い視線を感じたのか、ミアティラ(伊ブルーベリーを意味)は地球儀から離れた。

2000年前、イエス・キリストが降臨し、人類に福音をもたらした。その日を祝うクリスマス・シーズンが今年もやってきたが、地球上では環境保護問題ばかりか、紛争や戦争が至る所で繰り広げられている。われわれは2000年前のイエスの福音を正しく理解しなかったのだろうか。クリスマス市場の喧騒な中では考えもしない思いが次から次と湧いてきた。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年11月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。