なぜ子どもは時間を守れるのに、大人は守れないのか?

尾藤 克之

学校に通う子供は、1日にさまざまな教科を時間通りにこなしていく。開始時間になったら授業に参加し、終わったら次の授業に向かう。それを可能にするのが「時間割」。大人にも正しい「時間割」があれば、どんどん仕事がはかどるはず。ところが、残業に追われていつも「忙しい、忙しい」と口にしている。子供は「忙しい」を口にすることは無い。

今回は、『仕事を高速化する「時間割」の作り方』(プレジデント社)の著者である、平野友朗(以下、平野氏)に、仕事を効率化するヒントについて聞いた。

付箋を使うとスピードが落ちる

――付箋は、誰もが一度は使ったことがあるツール。しかし、最近は使用する機会が少なくなってきた。手帳やノートに貼ってもいつの間にか剥がれてしまう。

「今は滅多に使っていません。使うとしたらちょっとしたメモや本のしおりの代わりくらい。ノベルティでもらった付箋は、使わないので人にあげたり、捨てたり、定期的に処分しています。私が付箋を使わない理由は明確です。付箋は貼ったり剥がしたりを繰り返すと粘着力が弱くなり、剥がれてなくすことがあるからです。」(平野氏)

「備忘録としてパソコンのモニターに貼っていたのに、いつの間にかなくなっている。『あれ、どこに行った』と探しても見付からない。忘れた頃、デスクの下に発見。どこに書いたのかわからなくなったのも一度や二度ではありません。」(同)

――付箋(ポストイット)はアメリカの3Mによって開発された。同社の研究員が、たまたま非常に弱い接着剤を作り出した。これは偶然から予想外のものを発見するセレンディピティのケースとして有名になった。現在では100ヶ国以上で販売されている。

「付箋でスケジュールを管理するという話を開きますが、これも難易度が高い。付箋に予定とTODOを書いて手帳に貼り付ける。変更があれば書き直す。予定通りにできなければ翌日に付箋を移動する。付箋をぺらっと剥がして貼るのは簡単ですが、繰り返していると粘着力が弱くなります。気がつくと貼れていない漏れが起きます。」(平野氏)

「いまは、クリアファイルに、書類を渡す目的を書いた紙を貼り、使い回しています。『請求書の発送をよろしくお願いいたします。完了後はファイルを返却ください。平野友朗』と書いた紙を貼り、その中に請求書を入れてスタッフのデスクの上に置いています。このようなクリアファイルを複数用意して、使い分けています。」(同)

――平野氏のケースのように、剥がれてしまうことが多いため、より強い接着面を持つポスト・イットも作られている。読者のなかには、ポスト・イットの愛用者もいるかも知れないが、ぜひ、ケースバイケースで使い分けることをおすすめしたい。

メールはあえて削除しない

――本書の興味深いパートのひとつがメール術になる。私はメールは片っ端から削除している。これは当時の上司の影響が大きかった。少なくとも半年経過したら全てのメールは削除する。古いメールに生産性はないし、無駄なことのほうが多いと考えていた。

「全てのメールをこまめに消している人の話を聞きます。『要らないから消している』という方もいますが、消すという作業自体が時間の無駄です。昔は、メールサーバーの容量が少なかったのですが、今では状況も変わりました。GSuiteのGmailはもともと30 GBの容量が用意されています。10年使ってまだ上限に達していません。」(平野氏)

「メールの通数が増えても検索スピードにはほぼ影響がありません。そうなるとメールを 消す必要がないのです。私はメールは消さずに既読のものを非表示にしています。これならば視界に入らないのでストレスがありません。」(同)

――メールボックスは自分仕様にカスタマイズすると便利とのことだ。

「私の場合は、黄色は後で読む(選別前の未読メールも含む)、赤は重要、青は時間ができたら熟読、このように色分けしています。毎朝、100通以上のメールがたまっています。それをこのように仕分けして1日がスタートします。時間がかかるメールは隙間時間に処理します。隙間時間にやるべきものがメールの処理です。」(平野氏)

――手帳、ノート、付箋、優先順位付け等、簡単にできそうで実は簡単ではない。習慣を変えることも簡単ではない。時間術のスキルはいくつかあるが、自分の向き不向きを勘案して取組むようにすれば、効率は上がってくる。この機会に振り返ってみては。

参考書籍
仕事を高速化する「時間割」の作り方』(プレジデント社)

尾藤克之
コラムニスト