こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
昨日に引き続き市場移転問題を取り上げます。週明けに行われた追加対策工事の入札において、入札金額と予定価格に1億円以上の乖離があり、三たび不調に終わるという事態が発生しました。
豊洲市場の追加対策工事、また入札不調
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3223728.htm
まず前提となる入札制度についてはお話しなければなりませんが、以前にブログで取り上げた通り、「100点満点の完璧な制度」というものはありません。
都発注工事 入札不調が約2倍に
http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20171122/0003990.html
その上で、小池知事と都政改革本部が行った入札制度改革では、入札不調の割合が約2倍となった反面、入札金額に明らかにバラつきが出るなど、競争原理が働いたメリットも見られました。
「入札不調が2倍(10.2%→19%)」というとインパクトが大きいですが、これは工事の「予定価格」を事前公表から事後公表に切り替えたためであり、予定価格を事後公表している自治体の平均値(18%)とほぼ一緒です。
予定価格が事前公表でわかっていれば、入札不調が起きづらくなることは自明ですから、ここまでは想定の範囲内と言えるでしょう。
総論として現時点で小池知事の入札制度改革は、「功罪の両面がある」という評価に留まるのが妥当なところで、
「入札制度改革はまるでダメだった」
と断定するには時期尚早であると思います。
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しかしながら明確な失敗は、この入札制度改革で導入した仕組みを、そのまま豊洲市場の追加対策工事に当てはめてしまったことです。
後にこの追加対策工事の入札においては一社入札・予定価格の事前公表を許容し、小池知事自身が「一般的な入札改革の見直しと豊洲の件は少々背景が違う」と認めたように、少なくともその一部は競争入札に馴染まないものでした。
今回不調となった地下ピットのコンクリート敷設工事については、建物自体の工事の延長線上にあるものであり、それを請け負っていたゼネコン以外が行うことは事実上、難しい案件です。
冒頭のツイートでも申し上げたように、今回の入札では予定価格が公表されていたにもかかわらず、あえて(不調になるとわかっていて)1億円以上高い金額を入札したのは、「この金額なら請け負うことも考えられる」という事業者側の明確な意思表示です。
もはや競合する相手が存在しない以上、外形的に「競争入札」の手続きを整えることにほとんど意味はなく、事務的なコストや万が一の不調リスクを減らすためにも、特命随意契約に切り替えるほうが望ましいのではないでしょうか。
「そんなことを許したら、事業者の言いなりに金額が上がるではないか!」
というご意見もあるかと思いますが、自社しかできない作業に対して、民間事業者が相応の値を主張するのは市場原理そのものであり、ある意味では致し方のないことです。
少なくとも本件については、競争原理が働かない前提を作り上げてしまった側に問題があるのであって、この点で事業者を責めるのは筋違いになると思います。
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この結果を受けて、現時点で追加対策工事9件の中で決まっているのはわずか2件ということになりました。
他の入札案件の中にも、方針切り替えが必要なものがあると思います。
状況を精査した上で、きたる都議会定例会の中でも、対案をしっかりとお示ししていく所存です。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は東京都議会議員、おときた駿氏のブログ2017年11月29日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。