ウィーンで初雪が降った

11月30日、ウィーン市内に雪が降った。今年の冬は厳しいと聞いていた。週末にかけ早朝はマイナス10度という気象予測が流れていたから、雪が降るだろうと密かに期待していた。それに応えるように、初雪は降ってきた。それにしても、冬になると雪が必ず降ってくれる。その四季それぞれの変わらない気象に、驚きと共に、感動を覚える。

▲ウィーン市内の初雪風景(2017年11月30日、ウィーン市16区で撮影)

▲ウィーン市内の初雪風景(2017年11月30日、ウィーン市16区で撮影)

毎年、初雪が降れば一本のコラムを書くことにしている。記録という意味もあるが、雪の美しさを忘れないように、という思いからだ。実際、雪が降る日は哲学的になる。目の前の視界が雪で塞がれると、人の思考は否応なく内に向かう。

180万人の人口に膨れ上がったウィーン市内に初雪が降ったので、市庁舎前広場のクリスマス市場はクリスマスシーズン雰囲気を益々高めているだろう。クリスマス市場で欠かせない飲物プンシュ(ワインやラム酒に砂糖やシナモンを混ぜて暖かくした飲み物)を飲む市民も増える。

ご存じだろうか。あの天才モーツアルトはプンシュが大好きだった。そしてドイツ人詩人フリードリヒ・フォン・シラー(1759~1805年)はプンシュを称える詩を書いているほどだ。シラーはひょっとしたらモーツアルトよりプンシュが好きだったのかもしれない。当方は、というとアルコール類を良く消化できない。通常のワインの一口だけでも酔いが回ってしまう。だから、子供用のプンシュは飲めるが、大人用のプンシュはダメだ。最近は、様々な果物のエキス入りやリキュール入りのモダンなプンシュが増えきた。

当方は今、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「火星15」を発射させた北朝鮮の金正恩労働党委員長の胸の内を探り、メルケル首相とシュルツ社民党党首の大連立交渉の行方や31歳のセバスチャン・クルツ国民党党首と極右政党「自由党」との新連立政権の発足が近いオーストリアの政界の行方を考えている。また、バチカンでのフランシスコ法王と保守派聖職者のいがみ合いを考えている。

それらの思考が雪が降る日、何かパーッと消えていくように感じる。頭の中に雪が降り、このまま降り続けると、頭の中は雪で一杯となる。そうなれば、ICBMもドイツやオーストリアの政界もバチカン法王庁の未来も当方の思考の世界から消えていくかもしれない。怖いが、そうあってほしいという思いが出てくる。

雪は人を哲学的にするが、諦観の思いも深まってくる。11月に誕生日を迎えた当方はやはり1歳年をとってしまったのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年12月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。