電波行政と相撲部屋に残る八百長の構造

池田 信夫

政府の規制改革推進会議は11月29日に出した答申で、注目されていた電波オークション(競売)について検討を継続する方針を出した。「価格競争の要素を含め周波数割当を決定する方式を導入する」という玉虫色の表現だが、これはオークションを実施するという意味だ。

同じ日に相撲の横綱、日馬富士が暴行事件で引退に追い込まれたが、これには八百長をめぐるもめごとがからんでいると見られる。両者は無関係な出来事だが、共通点がある。ガチンコ(真剣勝負)をきらい、あらかじめ話し合いで勝者を決める八百長の構造だ。

電波オークションを拒否する総務省の八百長

オークションは普通の国有地の売却のように、公開の場で最高値を出した業者に電波を売却する制度で、日本以外のOECD(経済協力開発機構)諸国では導入されている。総務省が最後までオークションを拒否するのは、業者との「相撲部屋」的な関係があるからだ。

これは当コラムでも解説したNOTTVの例でみるとよく分かる。この問題は2007年に、2.5ギガヘルツ帯の比較審査が行なわれたときにさかのぼる。

このとき4グループの中でドコモが落選し、ウィルコムが当選したが、経営が破綻してカーライル・グループに買収され、さらにソフトバンクが買収した。同社が経営の破綻したウィルコムを買収したのは、4G(第4世代)と呼ばれる900メガヘルツ帯の割り当てで総務省に貸しをつくる取引だったと考えられる。

他方、総務省が2.5ギガ帯でドコモを落としたのは、2011年にアナログ放送をやめて空くVHF帯を与える取引だった。VHF帯には外資のクアルコムが参入しようとしており、これに対して民放連が既得権を守ろうとしていたが、通信業者の協力が必要だったのだ。

クアルコムは最後まで粘り、衆議院議員会館で公聴会が開かれた。民主党の議員が「オークションをやれ」と追及したが総務省は拒否し、電波監理審議会はわずか2時間の審議でドコモ=民放連グループのNOTTVに免許を与えた。それはわずか3年で破綻し、VHF帯はあいたままだ。

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