こんにちは!肥後庵の黒坂です。
「完全食品」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?その食事だけで人間の必要な栄養分を全てカバーできる!という夢のような話です。これまで様々なものが「これこそが完全食品だ!」と言わんばかりに華々しく世の中に出て「それ違うでしょ!」と激しいツッコミを受けるということを繰り返しています。歴史を見てみると「牛乳は完全食品です」とつけられたキャッチコピーに対し、アメリカの連邦取引委員会から「不正広告だ」というツッコミを受けたことがあります。
「完全食品」という考えについて私見を述べてみたいと思います。
完全食品は存在しない
まず、結論から言うと「完全食品は絶対に存在しない」と考えています。「なんでお前にそんなことが分かるのだ?」とお叱りを受けるかもしれませんが、この意見を変えることはありません。
世の中にある数多ある食材は色んな栄養素を含んでいます。ビタミンCが豊富だったり、カリウムを多く含んでいたりと様々です。よく次のような表を見ることがないでしょうか?全てがきれいにバランスされているものはなくて、たいていこんな風に尖っています。
そしてすべての栄養分をまんべんなく、しかも必要量をちょうどよくするものというのは一つの食材だけでは存在しません。私が知る限り、最強の食材とは「モロヘイヤ」で、その栄養の豊富さは他の緑黄色野菜を始め、あらゆる食材と比較しても群を抜いています。でもそんなモロヘイヤにも不足する栄養素はありますし、逆に過剰になってしまうものもあることを忘れてはいけません。例えばモロヘイヤに含まれているシュウ酸は、茹でて火を通せば取り除くことは可能ですが100%ではありません。モロヘイヤが体にいいからと毎日食べてシュウ酸の取り過ぎで尿路結石になるとシャレになりません。玄米も大豆もなんでも同じで、必ず不足する栄養素と過剰になる栄養素があるものです。
その食材を食べるだけで、栄養不足・過剰にならずちょうどいい健康状態を保てる人体構造に合致した食材なんてあるわけがない、というのが私の考えです。
「組み合わせ」で完全化に近づく
「完全食品は存在しない」という話を出してしまったわけですが、私は「完全料理」ならありえると思っています。自然界にないなら、人の手で料理にしてしまうなら可能性はあるわけです。昔から安くて栄養豊富な食材といえば「卵」「乳製品」「納豆」。確かにこの3つは栄養豊富な食材に間違いはありませんが、その一方で不足するビタミンCがあります。ならばその不足する栄養素を加えてしまえばどうなるでしょうか?納豆に卵をかけて刻みネギを振りかけます。そうなると不足していたビタミンCをネギが補ってくれる格好となります。ついでにキムチを入れると最強のお手軽料理になります。キムチの乳酸菌は納豆菌をエサにしてどんどん増えるので、納豆+卵+ネギ+キムチを一緒にしてしばらく放置することで不足する栄養素が思いつかないくらいの代物になります。
しかし、やっぱりこれも「完全」ではありません。毎日、毎食お腹いっぱい食べるとなるとキムチの塩分過剰になったり、生卵も食べすぎるとアビジンというビタミンを阻害する物質を取りすぎてしまいます。ですので時々1食頂くことで、不足する栄養素をカバーする食と考えるとよいでしょう。
このように1つの食材で完全なものがなくても、組み合わせることで少なくとも不足する栄養素を補うことになります。あれ?組み合わせるってつまりは料理のことですよね?そう、結局色んなものをおいしく、無理なく、分量を食べられるように料理をして完全化に近づく努力をしましょう!というどこにでも言われていることが答えになると考えます。
投資も栄養も「アロケーション」が基本中の基本
投資で失敗する典型的な例は一つの資産に資金を投じることです。どんなに魅力的な投資商品であっても、価格が暴落してしまうと一気に資産を減らしてしまうことになります。ですので、投資タイミングや商品を分散する「アセットアロケーション」は投資をする上での基本中の基本です。
栄養もそれと全く同じです。モロヘイヤだけ、納豆だけと過信してそればっかり食べてしまうと栄養不足・過剰のダブルのリスクを引き受けることになるでしょう。今は言われていませんが、「モロヘイヤに含まれる○○は実は体に悪かった!」みたいな実験結果が出てしまうと、リターンと思っていたものがオセロの白黒のように一気にリスクにひっくり返ります。一時期、あれだけもてはやされた赤ワインの健康効果も、今では「アルコールが脳に悪い」と言われるようになりました。栄養や健康の世界は簡単に定説がひっくり返ります。「酒は百薬の長」というのは今では完全に間違っている表現になってしまいました(断っておくと人体健康には悪くても、精神的にはお酒はありだと思っていますが)。
健康や栄養は複雑系、投資と同様に食べるものをアロケーションすることです。そうすれば定説がひっくり返るようなリスクにさらされても、他の食材も色々食べているので問題にならないわけです。「完全食品」という幻想を振り払い、投資も栄養もアロケーションしていきましょう!