相手を変えてしまう“魔法の言葉”

中学生や高校生が主役の青春ドラマで、よく次のような台詞を聞いたことがありませんか?
不良ぶってる男子生徒と彼が気になる女子生徒の会話としましょう。

「俺は見たとおりの不良だぜ。かっぱらいや喧嘩もしょっちゅうだしな」
「不良ぶったってダメよ。私には○○君が本当は優しい人だってことがわかっているんだから」

ドラマの展開だと、二人が惹かれ合い、彼女の絶体絶命のピンチを彼が命がけで助けるという流れにでもなりそうですね(笑)

「○○君が本当は優しい人だってことがわかっているんだから」という台詞は、実は人間心理を巧みに突いた言葉なのです。拙著「説得の戦略」P218に書いたように、人は自分に貼られたラベルに従った行動をする傾向が強いのです。

あなたにも心当たりはありませんか?
「〇〇さんは頭がいいねえ」「〇〇さんは親切だねえ」「〇〇さんはいい人ですね」…ということを言われると、なんとなくその気になって、少なくとも「いい人ですね」と言ってくれた相手の前では「いい人」であろうと努力したような経験が…。

人は誰しも、「いったい自分がどのような性格なのか?」「自分が他人の目にどのように映っているか?」がわからずに不安を抱いています。

「いっそ誰かに決めて欲しい」という深層心理を持っているのです。
占い師は人間のこのような深層心理を利用して、誰にでも(多かれ少なかれ)当てはまるようなことを言って、相手の信頼を得ようとします。
これをコールド・リーディングといい、悪事に用いられることも少なくありません。

いい方向に用いれば、win-win の関係となって、双方ハッピーになれます。
職場の人間関係でも、「鈴木くんは本当に営業が上手だねえ」「ここは営業が得意な鈴木くんを見込んで頼むよ!」と部下の鈴木くんに「営業が得意」というラベリングをすれば、きっと鈴木くんの営業成績は伸びるでしょう。

小さな気配り(これそのものが大きな効果をもたらすことは拙著P81〜)をしてもらった相手に、「〇〇さんは本当に気が利くね~。いつもありがとう」と感謝の一言をかければ、相手はあなたの期待に応えようと一層頑張るはずです。

男女関係でも、「〇〇さんは本当はとってもいい人なんだ。ぼくは知っている」「〇〇君はいい人なのね。だから悩んでいるんだわ」などとラベリングすれば、相手は本当に「いい人」になってくれます。少なくともあなたに対しては…(^^;)

説得の戦略 交渉心理学入門 (ディスカヴァー携書)
荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年12月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。