オリンピック収入増の「秘策」特定寄附制度の活用を --- 伊藤 悠

寄稿

オリンピック・パラリンピックの世界では、普段使わない「アンブッシュ」という言葉がよく出てきます。

これは、知的財産の不正使用という意味で、オフィシャルスポンサーの権利を守るために徹底されているマーケティング・ルールです。

例えば、先日の都議会閉会日のオリンピック・パラリンピック議員連盟(略称)の際にも、ひな壇の議員がペットボトルのお茶から商品ラベルを剥がすように促されたのは、スポンサー以外の商品名がテレビに映らないようにするアンブッシュ対策で、都議会議員にも徹底されている証拠です。

現在、2020東京大会の課題になっているのが、大会運営費の圧縮と、運営費を稼ぐ収入増であることはご存知の通りですが、収入増を考えるならば、さらなるスポンサー収入の確保を考えないといけません。

しかし、オフィシャルスポンサー以外の企業から五輪にリンクさせた形で広告費を募るのはもとより、アンブッシュの観点から寄付を受けることもできません。

そこで、私が提案したいのが個人寄付です。

そのヒントは北海道の旭川駅にありました。同駅に降り立つと、改装された駅舎の壁面の木目にアルファベットで無数の個人名が刻印されているのが目に入ります。聞けば、1万人の有志が寄付し、駅の改修工事に一役買ったそうです。

そこで、都がオリンピック施設を建設する際には個人寄付を募り、寄付してくれた個人名を施設に刻印したらどうでしょうか。

「ここに、お父さんの名前があるだろ」みたいな会話が親子で交わされ、オリンピックが語り継がれれば、オリンピック施設がハコモノではなく、国民の愛する遺産(レガシー)となり、2020東京大会そのものが深い味わいを帯びてくると思うのです。

実は、制度的に可能性があるのは、都の「特定寄付」という制度です。通常は、都民の都への寄付は一般財源に入ってしまって、施設にひも付きませんが、この特定寄付を使えば、「私の寄付があの施設に回った」ということになるわけです。

最近の例で特定寄付制度を活用したのが、石原元知事が呼びかけた尖閣諸島都有化に向けた寄付金でした。今では塩漬け状態ですが、まさに特定寄付の前例です。

この制度を活用すれば、アンブッシュに抵触することなく、都民、国民からオリンピック・パラリンピックへの寄付を無理なく求めることができそうです。アンブッシュの制約に萎縮せずに、こうしたアイデアを出すことで、都民、国民のオリンピック・パラリンピックへの参加意識を高め、思い出深い「みんなのオリンピック」にしていきたいと考えています。

伊藤 悠(いとうゆう)東京都議会議員(目黒区選出)、都民ファーストの会 政調会長代理

1976年生まれ。早稲田大学卒業後、目黒区議を経て、2005年の都議選で民主党(当時)から出馬し初当選。13年都議選では3選はならずも、17年都議選では都民ファーストの会から立候補し、トップ当選で返り咲いた(3期目)。都民ファーストの会では、政調会長代理と市場政策プロジェクトチーム座長を務める。