納得がいかない。安室奈美恵のNHK紅白歌合戦出演についてである。ネットニュースでは速報が流れ、歓喜する声があった。出来レースだという批判もある。ただ、この件は手放しで喜んでいいものだろうか?
安室奈美恵とは、安室奈美恵である。20歳での結婚・出産などで世間を驚かせたが、その後も、常にダンス、歌などで自分の世界を構築してきた。
もちろん、ファンや、国民の期待は分からなくはない。来年9月に引退を控える中での紅白出演だ。最後の紅白ということになるだろう。ただ、常に自分のペース、世界をつくる安室奈美恵にとって、安室奈美恵らしい行為なのだろうか。これにより、彼女の安室奈美恵性が失われてしまうのではあるまいか。私に言わせると、SMAPが紅白に出なかったことも、安室奈美恵が紅白に出てしまうのもそれぞれ「らしくない」行為なのである。安室奈美恵が、安室奈美恵らしく引退するためには、ここは紅白出演断固拒否の姿勢をとるべきではなかったか。
だいたい、紅白とは究極の休日出勤である。引退を控えた者に年末くらい休息を与えても良いのではないか。
紅組ではなく、特別枠での登場ということだが、これにも疑問が残る。とはいえ、視聴者は紅組が立てたヒットマン、刺客として見てしまうのではないか。
マルクスは「これまでのすべての社会の歴史は階級闘争の歴史である」と言った。
安室奈美恵の紅白出演を容認するのであれば、白組も特別枠を投入するべきだ。ここは、小沢健二とCorneliusによるフリッパーズ・ギター再結成や、小沢のソロでの出演、さらにはキタサンブラックの馬主で知られる北島三郎の電撃復帰などに期待したい。あるいはチェッカーズ再結成だ。
出演により、紅白という闘いの公平性が損なわれてしまうというのは、安室奈美恵も望んでいないはずだ。何より、安室奈美恵らしい終わり方を損ねるものだと言えないか。
今からでも遅くない。安室奈美恵は出演を再考するべきだ。もし出演するならば、白組勢も特別枠を。怒りの火柱を断固として燃え上がらせるのだ。無慈悲な鉄槌を振り下ろすのだ。
最新作よろしくね。これが売れないと明日の糧食もままならないのだ。
編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年12月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。