今さら報連相っていちいち必要?と思うことはないか。「あとで報告すればいいや……」「いちいち連絡しなくてもいいよね」。上司からは「お前に任せるから!」と言われていた。仕事も忙しいだろうし、そんな時に話しかけても迷惑かと思っていた。ところが、突然、上司の機嫌が悪い。「報連相を後回しにした結果、トラブルが発生した」と上司。
「冗談じゃない」とあなた。実は、報連相を怠ったことによるトラブルは多い。場合によっては取り返しがつかなくなることもある。今回、紹介するのは、『会社では教えてもらえない上に行く人の報連相のキホン』(すばる舎)。著者は、研修講師などを務める車塚元章さん。会社では、なかなか教えてくれない報連相のイロハがまとめられている。
上司は報連相を必要としている
――新入社員の頃には多くの企業で「報連相研修」があったり、上司から口うるさく「こまめに報連相するように」と言われるものだ。しかし、入社数年目にもなると仕事に慣れ、自分で線引きしてしまう人が多い。決して手を抜いているわけではない。
「私は研修講師として、多くの企業で新入社員から管理職までの研修をしています。その中で『今さら報連相なんて必要ない』とおろそかにして、上司からの信頼を知らないうちに失っているビジネスパーソンを多く見てきました。一方で、上司からの信頼が厚く、仕事を任せられている人もいます。この違いはどこにあるのでしょうか。」(車塚さん)
「信頼が厚い人は、上司が求めているタイミングで報連相ができています。では、ほかの人の報連相と何が違うのでしょうか。それは、『上司の立場に立って報連相をする』という点です。どんなにささいな情報だとしても、必要な情報を伝えています。」(同)
――必要な情報が伝えられていれば上司はどのように思うのか。情報の元になっている、プロセスや、仕事の進め方にとても関心があるということになる。上司は、仕事の過程や、どのようなプロセスを経て必要な情報にいたったかを知りたいのである。
「報連相が本当に必要になってくるのは入社数年後です。ある程度、仕事ができるようになった段階で、どれだけ上司に報連相をし、フィードバックを得られるかどうかが、『上に行く人・行かない人』の大きな分かれ道になるのです。上司は部下の動きを把握する必要があると考えるものです。そのため報連相を必要とするのです。」(車塚さん)
報連相をメールで伝えるには
――報告と同様に、わかりやすい連絡は「短い」という特徴がある。わかりやすい連絡では、重要なキーワードで短く伝えることが必要である。さらに、形を変えて、何度もしつこいくらいに伝える。印象に残りやすくする工夫をすることが大切だ。
「実際に『何回連絡しなければいけない』という基準があるわけではありませんが、一度連絡して満足するのではなく、2回、3回とくり返し伝えることが大切です。これは口頭での連絡でも、文書による連絡でも同じことが言えます。忘れられなくするため、記憶に留めてもらうために『短く、何度でも伝える』のです。」(車塚さん)
――次回のミーティングを控え、部長から「営業部メンバー全員に、『事前アンケートを提出するように』とメールを出して」と指示されたとする。あなたは提出期限の5月5日までに、事前アンケートの提出を求めるメールを送らなければいけない。以下は、車塚さんの回答をベースに考えたものだが、印象に残りやすいように書くことがポイントだ。
—– ここから —–
To: 営業部メンバー全員
Sent: 4月25日 10:01 AM
Subject: 【提出期限のご連絡】事前アンケートにつきまして
営業部のみなさま
お疲れ様です。次回のミーティングに向けて、お願いをしている事前アンケートの提出をお願いいたします。提出期限は5月5日(水)になります。
1.提出日: 5月5日(水)
2.提出物:事前アンケート
3.提出先:営業支援課 鈴木
以上、来週5月5日(水)が、事前アンケートの提出期限となります。
何卒、よろしくお願いいたします。
—– ここまで —–
人事に詳しい人であれば、いわゆる「インバスケット(ディメンション)」と表現したほうがわかりやすいかもしれない。自社に近いシチュエーションを設定することで、ビジネスセンスや業務処理能力を測定することができる。このようなケースを部門別、役職別に用意しておけばかなり実践的な人材育成が可能になるだろう。
尾藤克之
コラムニスト