繰り返し経験する事象や何度も目にしたものに対して、好意や親しみを感じる現象を「単純接触効果」といいます。
心理学者のザイアンツによる説で、モアランドは、実験により、対人的魅力にも単純接触効果が生じることを検証しました。拙著「説得の戦略」P172で、以下のような実験結果を紹介しました。
米国の大学で、同じくらい魅力的な男性4人の写真を大学のクラスメートたちに見せました。
4人とも写真を見た学生たちと同じクラスですが、A君は授業に一度も出ていない、B君は授業に5回出席した、C君は授業に10回出席した、D君は授業に20回出席していました。
研究者は、4人のうちで誰が魅力的か、写真を見たクラスメートに訊ねたところ、授業に20回出席したD君が最も魅力的だと答えた学生が圧倒的に多かったそうです。
この実験では、その他の要素が入り込まないように工夫していたので、「会っている回数の多い人間の方が会う回数の少ない人間より、クラスメートが魅力的と感じたこと」が証明されました。
あなたにも経験はありませんか?
初めて会う人の多い中に以前からの知り合いがいると、その人の方が他の人達より好ましく感じたことが。
進学や進級でクラス替えをした直後と1年間一緒に過ごしてきた後では、後の方がクラスメートに親しみを感じたことが。
これは、人間の「保守性」からくる本能的なものなのです。
未知との遭遇は自分に何をもたらすか予想が付きません。危害を加えられる恐れがあります。
ところが、何度も接触した人やモノは「自分に危害を加えない」ことがわかっているので、自然と好意を抱くのです。
もちろん、接触する度に危害を加えるような相手には嫌悪感を抱きますが(笑)
「単純接触効果」という点からすると、恋愛にしろ営業にしろ、何度も会っている人の方がたまにしか会わない人よりも有利です。意中の異性がいるのであれば、同じサークルや同好会に入るのは極めて有効な戦略です。
営業マンが頻繁に得意先を訪問するのも、同様の効果が期待できます。初めての場所に誘うような場合は、事前にその場所の写真や動画を見せておくと効果的です。たくさんの写真や動画を事前に見ておくと、不安を煽る「初めて感」が薄らぎます。
レストランやホテル、はたまた観光地に誘う時などにスムーズに事が運びます(拙著P67)。
最後に、男性諸氏へのアドバイス。
女性は男性よりも、はるかに過去を忘れ去ることができます。出産の痛みを忘れないと新たな子づくりをしなくなるからだとも言われています。
理由はともあれ、女性よりも男性のほうがウンと「保守的」で過去にこだわります。
一生懸命「接触効果」を利用して親しくなっても、長期のインターバルを置いてしまうと「あなた誰だっけ?」ということにもなりかねません。
努力を無駄にしないよう、マメに接触しましょう。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。