バレンシア港のコンテナから1100キロ(72億円相当)の麻薬が検出

白石 和幸

eldiario.esより引用

2016年、欧州連合(EU)で麻薬の消費に充てた量は末端価格にして240億ユーロ(3兆1200億円)になるという。例えば、原産地ペルーでキロあたり1200ユーロ(15万6000円)、コロンビアで2200ユーロ(28万6000円)、或いはボリビアで2500ユーロ(32万5000 円)だったものが、EUで凡そ3万5000ユーロ(455万円)まで末端価格は上昇する。英国の場合だと5万ユーロ(650万円)にまでその価格が吊り上がるという。

ヨーロッパに麻薬を導入するのに一番良く利用されている港はオランダのロッテルダム港である。最近は麻薬の密輸入をコンテナーの中に入れて送るのが主流になっている。それは「rip-off」と呼ばれている方法だ。即ち、コンテナー商品の輸入主が知らない内に麻薬が寄港地でコンテナーの中に積み込まれ、目的地でコンテナー通関の前に積み込んだ麻薬を引き抜くというやり方である。

例えば、ロッテルダム港だと年間で1000万本のコンテナーが到着するという。検査官が中身を調べられるのはその僅か0.5%だとされている。だから、麻薬密輸業者は一度に数本のコンテナーに麻薬を積め込み一緒に発送することにしているそうだ。そうすれば1本のコンテナーから麻薬が押収されても、他のコンテナーは検査なしで税関を通過する確率が高いというのだ。しかも、港でコンテナーから麻薬を引き抜く作業を請け負う業者が不足することはないそうだ。

ロッテルダム港以外に、ベルギーのアントワープやドイツのハンブルクも同様に麻薬が多量に密輸入される港になっている。同じく、アメリカから麻薬密輸業者が関心をもって麻薬を盛んに送ろうとしている仕向け地がスペインのアルヘシラス、バンンシア、ビゴの3港である。

例えば、バレンシア港での最近の摘発例として昨年12月17日に米国オークランドを出港した船に積まれていたコンテナーの中から2本のコンテナーを開けて調査したところ、1100キロで純度80%のコカインが検出されたという。この摘発作業には国家警察、治安警察そして税関調査官が介入した。この2本のコンテナーの中で1本目の中から703個の板状のコカイン、そしてもう一方からは1118個の同じく板状のコカインが見つかった。これは末端価格にして5500万ユーロ(71億5000万円)に相当するものだという。

同月13日にも、バレンシア港で米国ロングビーチを出港した船にアーモンドが積まれていたコンテナーの中から17個の袋に入ったコカインが摘発されている。重量は502キロ、1800万ユーロ(23億4000万円)相当の末端価格になるという。

スペインはコカインの導入が盛んで、EUで押収されるコカインの42%はスペインの港で摘発されたものだ。2015年は2万1621キロのコカインがスペインで押収された。その押収量は世界で9位に当たるという。これは名誉には値しないが、スペインの警察、治安警察、税関調査官らによる麻薬調査組織の活躍が功を奏しているという証である。

麻薬の消費という面から見ると、スペインそしてEUで一番消費が多いのはカナビスである。それはEUの麻薬市場で38%を占め、年間で末端価格にして93億ユーロ(1兆2000億円)相当の消費になっているという。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)の2015年度の広報によると、2億4600万人が2013年に麻薬を消費したという。その内の2700万人は過度の麻薬消費によって精神的に障害を起こしているという指摘がされている。

スペインは南米からヨーロッパに麻薬を導入するのに起点となっている。しかも、若年層から麻薬と容易に接する機会が増加している。これは深刻な社会問題となっている。