就活の時期になると、「学歴フィルターで門前払いをされた」「コネがないから内定をもらえなかった」「顔採用なんて侮辱している」…等々の不満が就活生から寄せられます。
それまでの人生で、客観的な試験の成績だけで選抜されてきた若者が多いので、気持ちとしてはとてもよくわかります。
しかし、純然たる民間企業がどのような資質の人たちを採用し、採用しないかは完全に自由なのです。
あなたよりも明らかに大学の成績が悪い学生が採用されて、あなたが落とされるというのは何ら不自然なことではありません。
私人間には「契約自由の原則」という大原則があり、誰とどのような契約を結ぼうが(公序良俗に反するような場合を除けば)完全に自由なのです。
私企業への就職活動は雇用契約の申込みで、それに応じるか否かは企業側の自由。
内定をもらえれば「始期付き解除条件付き労働契約」が成立します。具体的に考えれば容易にご理解いただけるはずです。
特定宗教を母体としている法人が、その宗教の信者だけを採用するのは当然のことでしょう。
反対思想の従業員が入ってきて内部を引っ掻き回されたら大変なことになります。
芸能事務所やモデル事務所への就職にあたって、顔やスタイルが重視されるのも当然ですよね。
肉体労働の多い会社なら、男性の比率が高いのが普通です。
さらに、内定を出すということは、企業側に一方的なリスクを負わせることになるのです。
先述したように、内定は「始期付き解除条件付き労働契約」の締結にあたります。
企業側としては、経歴詐称のような落ち度が内定者にない限り、そうそう簡単には内定を撤回できません。正社員と同等とまではいかなくとも、それに近い解雇規制が働くのです。
一方、内定者の側としては、民法627条により、いつでも内定辞退の申し出をすることができ、申し出の日から2週間を経過すれば「始期付き解除条件付き労働契約」は終了します。
このように、内定を出すのは企業側にとって大きなリスクであるにも関わらず、内定をもらった就活生側にとってはほぼノーリスクなのです。
もっとざっくばらんに言ってしまえば、面接官が変われば結果も変わります。
新卒一括採用だとたくさんの従業員が面接官として引っ張り出されます。その中には撃墜王がいて、どんどん最低評価を付ける人もいます。
当たりはずれは時の運というヤツでしょう。
就職なんて、実際に入社して働いてみないとわからないものです。
憧れていた一流企業で下働きばかりやることもあれば、中堅企業でやりがいのある仕事を任されることもあるでしょう。
人事を尽くして“気まぐれな天命”を待ちましょう。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年1月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。