今週のメルマガ前半部の紹介です。先日、榊原経団連会長が「副業は推奨できかねる」という趣旨の発言をしてちょっとした話題となりました。
今はネットやスマホを使えば場所や時間にとらわれず柔軟に働ける時代です。また、人口減社会の到来で「猫の手も借りたいほどの人手不足」状態でもあります。会社の中で一日中匿名でしこしこtwitterやってるような居場所の無い人達が、その時間をマネタイズできるようになれば、本人にとっても社会にとっても良いことだらけのはず。
なのになぜ経団連としては副業に渋い顔をするのでしょうか。実は副業というのは、日本型雇用の本質にかかわる微妙なテーマだったりします。キャリアにおける位置づけも含めつつ、今回は副業についてまとめておきましょう。
終身雇用は“一意専心”が超大前提
日本独自の賃金システムである職能給は賃金が職務ではなく能力(=年功)に結びついているため業務範囲がとても曖昧で、マネジメントしていくには「24時間365日、全員で同じ目標に対して一意専心、全力で取り組んでいく姿勢」が絶対不可欠です。
と書くといまいちピンとこない人も多いでしょうから、たとえば大部屋で20人くらい机並べて仕事してる光景を想像してください。上からポンポンと仕事という名のボールがおちてきますが、もちろんそれを誰が拾うべきなのかはあらかじめ決まってはいません。そういう場合に必要なのは、誰の担当かわからないような仕事を「オレがやらなきゃ誰がやる!」と無条件で積極的に取りに行く姿勢です。「オレがやらなきゃ誰かやるだろう」って考えてる連中はいないことが大前提なわけです。
同様のことは日本企業名物の残業や転勤にも言えますね。雇用調整を人員増減ではなく残業でこなす以上、繁忙期には徹夜くらいサクッとこなしてもらわないと会社は回りません。マイホーム購入直後に「欠員が出たから来月から北海道転勤してね」と言われても笑顔で「わかりました」と言える人材でなければ終身雇用は担保できません。
そういう環境の中で「18時から別の会社でバイトしている人」が許容されうるかと言えば、現実的には相当厳しいのではないかと筆者も思います。「誰が取るべきかわからないボール」が近くに落ちてきたときに、「18時から副業あるから見て見ぬふりをしよう」という人が増えれば、会社の生産性はダダ下がりでしょう。「副業の都合があるので転勤できません」とゴネる人が増えれば、終身雇用そのものが維持できなくなるでしょう。
というわけで「給料増やせないのは申し訳ないけれども、おいそれと副業なんて推奨できんわい」という経団連の姿勢そのものは(終身雇用の維持を前提とするなら)それなりに合理的だということです。おそらく政府にせっつかれる形で最低限のガイドラインくらいは出すでしょうが、いわゆる“総合職”という形で上記のような一意専心ぶりを要求されるホワイトカラー層にはなかなか浸透しないだろうと筆者はみています。
以降、
実は組織としても無視できない副業のメリット
個人が副業を始めるべきタイミング
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年1月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。