これから、期末にかけて、決算関連や新年度からの組織体制、昇進昇格などを検討する「会議」が増えてくる。「会議」とは、会社の経営戦略を決定したり、方向性を協議したり、意思決定をする場になる。これほど重要な位置づけであるにも関わらず、「会議」の重要性を認識している人は社内でも少ない。いったい何故だろうか?
だったら会議のプロに聞けば要点が抑えられるに違いない。沖本るり子さんは、「5分会議」を活用した、人財育成や、組織活性化の講師・コンサルタントとして活動中。TBS報道番組Nスタで“プレゼンの達人”と紹介された。近著に、『生産性アップ! 短時間で成果が上がる「ミーティング」と「会議」』(明日香出版社)がある。
会議の役割は、何ですか
あなたの会社で開催する会議は、「人と組織の成果と成長を支援する」役割を担えているだろうか。ほとんどの会議は、人と組織の成果に直結せず、成長も考えられていない。
「意見の食い違いから険悪な人間関係を生んでしまうこともしばしばです。ミーティングや会議は適切な運営を行うと効果的でもっとも生産性が上がるのですが、その目的と目標を理解していないことが多いように思います。本来は、人と組織の育成を担うツール(道具)なのですが、そのような認識の会社は少ないと思います。」(沖本さん)
「弊社のお客様で日本茶などの包装資材や雑貨の製造販売を手掛けるA社(東京都)は、みんなで決める会議を行った結果、部署間の壁が低く、風通しの良い職場になっています。参加者は自分の意見をくみ上げてくれたという気持ちになり、何かを決めることに、自分たちが関われるということで当事者意識が高まってきました。」(同)
このA社では、会議が嫌なものにならず、社員の実行力が高まったそうだ。そうなると、風通しの良い職場になり、部署間の壁が低くなっていく。
「社員満足度の『活力に満ち溢れた会社である』の項目は、当初の28ポイントから、47ポイントに上昇しました。社員たちが自社のことをこのように言える会社はそうありません。結果として離職率は、2013年の10 %から2016年には約2%(5分の1以下に減少)となり、多方面から注目され、表彰される会社になっています。」(沖本さん)
「社内での位置づけをかえるだけで、人と会社の成長を支援する『攻め』のツールに変えていくことが可能です。この機会に振り返るといいかも知れません。」(同)
会議の際に気をつけたいこと
人は、自分の意見を批評されるとネガティブな気持ちになる。そして、よほど神経のずぶとい人でない限り、批評する側も、嫌な気持ちになるから、思ったことでもなかなか口に出せなくなる。で、言うんじゃなかったと言ったあとで後悔してしまう。
あるいは、意見を言う前から、もし、こんなことを言って周囲から嫌われるのではないだろうか?と不安を感じる人もいる。感情と言うものが邪魔をして、気付いたことや考えたことがなかなか言えない人が少なくない。だから、言える場があると居心地がよい。
「気兼ねなく、悩まず迷わず発言できると、人は集まってきます。そんな場をつくれば、離職率も軽減できるし、採用も上手くいくようになります。離職率を下げて採用に一生懸命になるより、そこにいたいと思わせる仕掛けをすることが大切です。日ごろの会議で仕掛けはできますから、使わない手はありませんよね。」(沖本さん)
人事の機能に「評価」というものがある。多くの会社では、「評価」を精緻にすることに注力している。しかし、人が評価する以上、バイアスを排除することは困難である。だったら、「評価しやすい風土」を形成し、「評価しやすい人間関係」を構築したほうが早い。
沖本さんの「会議」は「評価」の話に通じるものがある。それには、「会議」を運用するためのルール、「会議」に参加する人の意識が大切になる。双方へのアプローチが上手くいったときに、「攻め」のツールとして機能することができる。さて、筆者も1月に新しい本を上梓した。ご関心のある方は手にとっていただきたい。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)。
尾藤克之
コラムニスト