「首の痛みや肩こりが治らない」「頭痛がする」「気分がスッキリしない」。このような症状のある人にお尋ねしたい。あなたは「ねこ背」ではないだろうか。私たちの生活のあらゆるシーンに「ねこ背」になる原因がひそんでいる。まずは「ねこ背」のプロフェッショナルに話を聞いてみよう。
今回、紹介するのは『ねこ背を治す教科書』(ソーテック社)。著者は、伊東稔さん(整体師、カイロプラクター)。大学卒業後、会社員時代を経て施術業界に入ったそうだ。ねこ背のしくみをやさしく解説していただいたので一部を紹介したい。
元気はつらつに「ねこ背」は似合わない
暗い性格だから「ねこ背」なのか、「ねこ背」だから暗い性格なのかはわからない。そこに悩むよりも、「こうすれば姿勢がよくなる」「こうすれば身体が軽くなる」「こうすれば心が軽くなる」と考えたほうが姿勢はよくなっていくと、伊東さんは答える。
「胸を張ってきれいな背中のS字カーブができている姿勢は、教科書的には美しくかっこよく見えますが、日常生活の中では記念写真を撮るときのようにいい姿勢でじっとしている時間なんて、少ないものです。短時間のポーズで『ねこ背』の姿勢をごまかしてみても、1歩足を踏み出せば本来の悪い姿勢が人に見られてしまいます。」(伊東さん)
「いい姿勢を意識しすぎて、緊張感いっぱいの身体の使い方をしていたら、それこそ健康的には本末転倒でしょう。『ねこ背』だと20万円のスーツを着てもかっこよく見えません。逆にいい姿勢であれば1000円の シャツでもかっこよく見えます。」(同)
また、伊東さんは、姿勢がその人の価値を大きく変えると主張する。たしかに姿勢が与える印象は大きい。人気がある映画俳優で「ねこ背」の人はいない。
「その姿勢をつくるのもあなたです。“いい姿勢”をつくるのにお金はかかりません。いい姿勢を見につけることで、健康を維持することにもつながります。」(伊東さん)
ハリウッドスターを想像してみよう
今日の私はキマっていた。新調したばかりのトムフォードのスーツ。ターンブル&アッサーのシャツにイギリス式のレジメンタルタイ。JOHN LOBBのMARLDONを合わせ、左手に輝くのはロレックス・サブマリーナー。007に出てくるジェームズ・ボンドに間違えられてもおかしくない、と鏡に映る自分の姿に朝から惚れ惚れとしていた。
ジェームズ・ボンドは、スパイ映画007シリーズの主人公であり、イギリス秘密情報部(MI6)所属する諜報員である。歴代ボンドはみな背が高くハンサムだ。007が封切られるとボンドに憧れる中年男性が増殖する。ボンドになりきり妄想を企てるのだ。ボンドのような瞳にはなれないが、身に着けるものをボンドと同じものにすることで近づける。
まさに紳士的でクール。もしや、いまここに居るのはボンドではないのかと錯覚する。ところが、周囲の評価は手厳しい。おかしい、こんなはずではなかった。実は「ねこ背」だったのだ。いったい、何故、「ねこ背」になってしまったのか。伊東さんによれば、日常の何気ない行動が「ねこ背」を誘発するという。
デスクワークは要注意だった
「デスクワークとねこ背」はとても相性がいい。気をつけないと「ねこ背」があたりまえになってしまう。とくにパソコン仕事は要注意だ。
「長時間のキーボード操作をしても疲れないように、机、椅子の位置や高さを調整したり、キーボードの打ち方を工夫しても『ねこ背』を防ぐことはできません。『疲れない工夫』をしていても、肩こりや腰痛に発展する動きしかしていないからです。」(伊東さん)
「デスクワークとねこ背の改善は同時にできません。気をつけるべき点は、仕事で動かさない個所を、仕事をしていないときに、いかに動かすかです。動かさないと、腰回りや背中も硬くなり『ねこ背』が完成します。」(同)
ねこ背の原因は身体の硬さにある。ちょっとしたすきま時間を使ってストレッチする方法を試してみては如何だろうか。「ねこ背」が改善するかも知れない。さて、筆者も1月に新しい本を上梓した。ご関心のある方は、「ねこ背」にならないように、手にとっていただきたい。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)。
尾藤克之
コラムニスト