きのう(1月22日)の通常国会では、安倍首相の施政方針演説の中身が注目されたが、この時事通信の記事にもあるように、世間一般の認識は「働き方改革」や先の衆院選の公約となった社会保障の全世代型対応、あるいは北朝鮮情勢が主な焦点といったところだろう。しかし、マスコミの編集プロセスで絞られる焦点はある意味、最大公約数的なものであって、やはり全文を読まないと、安倍首相が「今年本気を出す」と宣言した政策の細部を漏らしてしまう。
アゴラが昨年末、ICPFと共同開催したシンポジウムで取り上げ、改革の機運が出てきた電波制度についてどう言及されたか。期待半分程度で見てみたところ、「生産性革命」の「行政の生産性向上」のくだりで言及されていた(太字は筆者)。
新たなイノベーションを生み出す、規制・制度改革を大胆に進めます。ビッグデータ時代に対応し、行政が保有する様々なデータから新たな付加価値を生み出すため、公開、民間開放を原則とします。通信と放送が融合する中で、国民の共有財産である電波の有効利用に向けて、大胆な改革を進めてまいります。
昨年5月に自民党の行革推進本部、11月に政府の規制改革推進会議からそれぞれ申し入れられてきた電波改革の提言を踏まえ、安倍政権として「やります」という大きな方向性は宣言したわけだ。長年規制改革の岩盤中の岩盤とも言われ、当事者であるマスコミでも“タブー”視してきたきらいのある電波制度改革の話が、通常国会の施政方針演説に盛り込まれること自体が画期的だった。小林史明総務政務官によれば、やはり初めてのことらしい。安倍政権がこれまでにない本気度を示したといえる。
今回の電波改革はテレビ局の話とは関係のない、IoTなどのイノベーション対応が主眼だ。しかし、テレビはもちろん新聞でもほとんど報じられることはないであろう。そうした旧来型の過度な警戒心がいまだ続いているのも妙にしか思えないが、私が施政方針演説で電波改革が取り上げられたことをツイートすると、案の定、ネトウヨさんらしき人たちからこんなメンションが飛んできた。
電波オークションの効果は、税収UPも大事だが、超強固な既得権益に守られていた在京TV局への過去50年以上にも及ぶ優遇措置を改める歴史的第一歩!
電波を有効利用するとともに、「電波」を発する売国議員たちを潰していきましょう
申し訳ないが、「電波オークションをすれば、偏向報道のテレビ局を叩き潰せる」的なナゾ陰謀論の根強さに辟易させられる。おそらく右派の経済評論家あたりが振りまいた言説が途中から一人歩きした結果なのだろうが、これまで池田信夫や山田肇先生、あるいは小林政務官が今回の改革で何が問われているのか、解説した記事がここまで載っているので、あらためて確認してほしいものだ。本質的な議論はオークションをやる、やらないではない。国民の共有財産である電波が、IoTや自動運転などイノベーションの進展とともに需要の激増が今後も予想される中で、どう有効利用していくかが問題である。