南米のペルーで昨年12月22日に在ペルー北朝鮮大使館の一等書記官Pak Myong Cholと三等書記官Ji Hyokが国外退去要請を受けたことが今月15日に報道メディアで明らかにされた。
その事件の発端は以下のような出来事がもとになっていた。
北朝鮮による相次ぐミサイル発射実験に憤慨していたクチンスキー大統領のペルー政府は、昨年9月に首都リマに所在する北朝鮮大使館に対し、ペルソナ・ノン・グラタとしてKim Hak Chol大使を含めスタッフをそれまでの6名から3名に縮小するように要請した。その要請を受けて、同大使館ではKim Hak Chol大使と他2名が国外に退去した。
残った3名のスタッフの中で大使館の代表となったのが一等書記官のPak Myong Cholであった。彼の存在がペルー警察で注目されるようになったのは、彼が15歳の少女にセクハラと判断される行為が明らかにされたからであった。彼女の両親がCholから娘がこれまで受信していたメッセージを警察に提出して訴えたのである。
そこで、警察はCholの電話を盗聴することにして、彼の電話内容や送っていたメッセージを傍受し始めたのであった。
そこで予想だにしなかった付録が舞い込んだという次第である。Cholと三等書記官のJi Hyokがペルーの過激派「共産党赤い祖国(PR Patria Roja)」と接触していたことが判明したのである。
PRはイランや北朝鮮のような独裁政権を擁護した活動を行い、米国やイスラエルなどの存在を断固拒絶する姿勢を持っている組織である。
残留している北朝鮮の外交官とPRのリーダー達が電話で交信している内容を警察が盗聴し続けている段階で、彼らが在ペルー米国大使館に勤務している米国人スタッフの妻や子供ら家族に危害を加えることを計画しているということが判明したのである。そして、北朝鮮のミサイル発射に絡む米国との成り行き次第では、彼らを殺害することも視野に入れていたということが発覚したのである。
この事態を重く見たクチンスキー大統領は、彼ら二人の外交官に対し、2週間以内に国外へ退去するように要求した通告を昨年12月22日に出したのであった。
この通達が発表される5日前には、リマの米国大使館では米国人スタッフに対し自宅から大使館へ勤務の往復には車を使うように指示し、歩行、自転車、ジョギングなどを絶対に行わないように厳重に忠告したという。
フジモリ派のガルシア・ベラウンデ議員はPak Myong CholとPRが接触していたことについて次のように述べた。「ペルー政府は戦略的な決定に基づいて判断をすべきだ」しかし、「双方の接触が確かなものであると証明された暁には、敵意と干渉に満たされた行為であるとして、同大使館は完全に閉鎖されるべきだ」と。
北朝鮮はこれまでラテンアメリカには5か国に大使館を設けている。キューバ、ブラジル、ベネズエラ、メキシコ、ペルーである。この中で一番関係の深い国はキューバである。キューバ革命の時から両国は接触をもっている。農牧畜の分野において、キューバは北朝鮮に技術提供をしていた。また、北朝鮮が第三国から兵器を入手するのもキューバがその仲介役を務めたことも往々にしてある。安倍首相が2016年9月にキューバを訪問した際にも、北朝鮮がミサイル発射実験を中止するようにキューバから忠告するように要請したという経緯があった。フィデル・カストロ議長が2016年に亡くなった時には、北朝鮮は3日間喪に服した。
ペルーとは1975年から両国の関係が始まった。1988年のアラン・ガルシア大統領の政権時に北朝鮮はリマに大使館を設けた。彼の大統領選挙には北朝鮮から資金の提供があったとペルー出身で現在スペイン在住のノーベル文学賞受賞者マリオ・バルガス・リョサが彼の著書の中で指摘している。これまでペルーから北朝鮮には銅の輸出が顕著である。
今回の事件を切っ掛けに、ペルーと北朝鮮は新たな局面を迎えることになるであろう。
※参考・現地メディア関連報道