東大生でも「果物は嗜好品」と誤解してしまう理由とは?

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

これまで数々の記事で果物離れが起こる理由や、その対策についてお話をしてきました。私は考えると果物離れの一番の理由は「誤解」。誤解ということは正しく理解されていない、ということです。今では果物の素晴らしさを愛好会の活動として説いている東大生でも、最初からその良さを理解出来ていたわけではない、という話があります。

東大生でも果物を誤解していた

毎日新聞の記事によると、

3年生、水野秀哉さん(22)は以前、「果物はお菓子みたいなもの。買うくらいならラーメン屋に行く」タイプだった。

(中略)

定期的に果物を買うようになったのは糖質制限ダイエットをして、肉などで食費がかさんだのがきっかけ。ビタミン豊富で、脂質がほとんどない果物を食べて、出費を抑えながら健康的にやせた方がよかったと気づいた。

引用元:毎日新聞「第1部 きょうのごはんは?/4 果物離れ、健康志向で挽回」

とあります。そして果物を買って食べるようになったのは、必要に迫られてのことだったことを明らかにしています。知識や勉学については国内最高峰に君臨する東大生でも、果物はお菓子のような嗜好品で積極的に食べるものではないと誤解していたわけです。彼は糖質制限ダイエットがきっかけで、フルーツに目を向けることになりました。

このように、果物離れの本質は果物の良さを正しく理解していないことに対する誤解だ、というのが私の考えです。

「野菜は必需品で、果物は嗜好品」の謎

果物は割高なスイーツと考えている人は少なくありませんが、果物はお菓子のような嗜好品ではなく、本来は毎日積極的に食べるべき必需品です。ここで食の嗜好品と必需品について考えてみたいと思います。

嗜好品は必需品とは違います。食べ物についていえば、お菓子とかコーヒーなど「栄養摂取より舌を楽しませる」ということを目的としたものがこれにあたります。お菓子やコーヒーは飲み食いしなくても、栄養不足にはなりません。ただただおいしいから食べる、それだけです。

果物は火を通さず、生食をするのでビタミンなどの栄養をそのまま摂取出来ます。野菜に負けない多様な栄養素を含む「おいしく食べられるサプリメント」のようなものです。本来はご飯やお肉、野菜などと同列に考えるべき必需品であるにも関わらず、果物は嗜好品だと考える人が少なくありません。嗜好品と思っているわけですから、毎日食べるものではなくあくまで「好きな人が食べたいと気が向いた時に食べるべきもの」という位置づけになっているわけです。

でも不思議ではありませんか?果物は贅沢品、嗜好品と呼ぶ人がいるのに、野菜を嗜好品という人はいませんよね?野菜は海外産と比べると、国産はかなり割高のものがあります。例えば中国産のにんにくはネットに3-4玉入ったものが100円で売られているのに対して、青森産は1玉300円という価格がつけられていたりします。その差は青森産を4玉買えば1,200円くらいになりますからざっくり10倍ほどです。それでも青森産のにんにくは嗜好品というより、「価格より品質と安全性を」とあなたも思うのではないでしょうか?

国産野菜は安心安全、果物は嗜好品。この違いは野菜は絶対必要な必需品で、「果物は嗜好品」という考え方に立脚したものです。健康とおいしさの詰まった食材、という点では同じはずなのに両者の見方が全然違うのはおかしいと思いませんか?私は朝フルーツだけを食べる生活をするようになって数年が経過しますが、始めてから一度も風邪を始めとする一切の病気にかからなくなりました。それまでは毎年必ずといっていいほど風邪を引いていたのですが、最近は風邪にかかる感覚を完全に忘れてしまうくらい健康を維持しています。特別、変化があったのは朝フルーツだけを食べる習慣だけですので、個人的な感想に過ぎないですがおそらく効果は抜群に出ているものと思っています。やはり、果物は毎日食べるべきものだと思います。

必需品→嗜好品へ変化していった果物

野菜と違って、果物は嗜好品と見られてしまう理由は2つ、1つは果物が贈答用としても使われていること、それからもう1つは甘さや食べやすさを求めて品種改良がされていったことです。

果物は贈答用に使われます。当店、肥後庵では高級フルーツを販売しており、売上の9割以上は自分が食べずに人に贈るギフトとして売れています。果物はサッと水で洗って皮をむいたらすぐに食べられます。老若男女問わず、0歳から100歳まで火を通さず、味付けをせずに楽しむことが出来ます。その一方野菜はどうでしょうか?贈答用の野菜って聞いたことがありませんね。野菜は基本的に調理をして食べるもので、料理が苦手な相手には喜ばれるより「料理しないといけないのか」と負担に感じる場合もあるでしょう。お菓子やコーヒーのように包みを開いてすぐに食べられるように、果物は皮をむいてすぐ口に放り込める手軽さがありますから贈答用になるのです。

そして果物はどんどん甘く、食べやすくなるように品種改良がされています。一昔前までは、スイカは塩をかけて食べることがありました。しかし、今はそのような食べ方をする人は少なくなり、スイカは何もつけずに「そのままかぶりつく」というスタイルがスタンダードになっています。これはスイカの糖度が高くなり、もはや塩をかけて食べずとも十分甘くておいしいと感じられるからです。最近ではおいしい種無しスイカ、ブラックジャックスイカと言うものも現れ、ぶどうも種無し皮ごと食べられるシャインマスカットが大人気です。

果物はどんどん嗜好品へと変わっていったことが、嗜好品に見られてしまう理由なのです。

必要性を理解すれば離れた人は戻ってくる

冒頭に取り上げた東大生も

産地や栄養のことを知ったり一度食べたりすれば、食べるのが当然になっていくはず。

といっています。今では所属人数は191人となり、みかんの素晴らしさやプロモーション活動をしてテレビなどのメディアにも取り上げられています。果物離れを食い止めようと、学生も企業もメディアも一体となって人々に呼びかけているのです。

果物離れは若者を中心に起きている減少であり、こちらの記事で詳しく解説しているのですが果物を食べているのは中高年層が多く、20代の若者の40%が「月に3日以下」という状況であることがデータで示されています。中高年層の年代で自分の健康に関心が全くないという人はほとんどいないでしょう。その反面、若者は健康より手軽さや価格を優先しています(こちらで詳しく取り上げています)。「果物は健康だよ!」と声高にいって、若者は「いやいや、健康より安くてサクッと食べられるものがいいよ」といっている構図です。つまり、若者は健康について中高年層ほど関心が高くなく、祖父母や両親が家にいた昔と違って、共働きが主流な現在においては孤食で親も果物を積極的に食べていない世代になっていますから、そもそも果物を積極的に食べてこなかったわけです。

しかし、自分の健康に関心が向くようになれば状況は変わります。新聞記事に取り上げられた東大生も、健康的にダイエットをする過程で果物の素晴らしさを理解でき、今では愛好会の代表を務めるまでになっています。

私も果物の素晴らしさを訴える記事を書くことを続けていきたいと思います。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。