「選択的夫婦別氏」法案が国会で成立しない理由

足立 康史

1.「選択的夫婦別姓」法案の修正が必要な理由

ツイッターを覗いていると、今日の読売テレビ「そこまで言って委員会」はむっちゃ面白かったと評判。しかし私は視れないので、夜にも録画で視聴したいと思います。まあ、橋下さん、どうせ日本維新の会の悪口を仰ってるんだろうな、と半ば諦めているし、思い出すのはAbemaTV「橋下徹の即リプ!」です。

「橋下徹の即リプ!」第5回くらいの古市憲寿さんがゲストだった回で、橋下さんが、日本維新の会は選択的夫婦別姓別氏に反対だ、と決め付けて、そして、大阪維新の会は大事だけど日本維新の会なんか「死んだほうがいい」「消滅した方がいい」と罵倒。腹立つから昨年末から賛成法案の立案を始めました。

しかし、今の民進系や共産党の議員立法「選択的夫婦別氏」案は絶対に国会で成立しません。それは、彼ら彼女らの法案をつぶさに読めば、その先に戸籍の廃止があるのは明らかだからです。もちろん橋下さんのように正面から戸籍は不要と論陣張るならいいですが、民共の輩たちは正面から議論しないのです。

そして思索に耽ること1ケ月、ようやく「選択的夫婦別氏」法案を修正した「戸籍への通称併記法案」の要綱が完成したので、紹介いたします。週明けから党内調整に持ち込みたいと思いますが、何よりも期待するのは、保守派、そして、特に左派からの批判です。サイボウズの青野社長にもご覧いただきたい。

2.「戸籍への通称併記」法案のポイント

要約すると、戸籍上の氏を同一とする現行の戸籍制度を基本的に維持しつつ、社会生活上の旧姓使用が認められるようにするため、戸籍に通称として旧姓を付記することで旧姓に戸籍上の根拠を与えるとともに、旧姓に一般的法的有効性を認め、旧姓使用の保障を図るというものです。添付の表をご参照下さい。

ポイントは3つ。第一は、戸籍上の氏が統一されている現行制度を維持しつつ、戸籍に婚姻前の氏を(通称として)付記することができるようにすることです。戸籍に婚姻前の氏を付記した者は、法令により氏名の記載又は記録を要する場合に、婚姻前の氏を(通称として)称することができる、とするのです。

第二のポイントは、戸籍に婚姻前の氏を付記した者は、法令により氏名の記載又は記録を要する場合において、婚姻前の氏のみを(通称として)称することができ、かつ、一般的に、社会生活上においても、婚前氏を使用できるよう、国と地方公共団体は必要な法制上の措置を講ずる責務を有する、としました。

この点について、社会生活上、旧姓(婚姻前の氏)と新姓(戸籍上の氏)の両方を使用できるものとすることも考えられますが、個人の同一性の識別という氏の最も重要な社会的機能が損なわれ混乱を招くおそれがあることから、この考え方を私は採用しませんでした。もちろん、議論の余地はあると思います。

第三のポイントは、子の氏は戸籍上の氏である新姓とすることです。外国人と婚姻した場合に、家庭裁判所の許可を得て子の氏を外国人の称している氏に変更することができる現行制度との均衡から、日本人配偶者間の子も片方の親が通称使用する婚姻前の氏に変更することができるとすることも検討しました。

しかし、戸籍が存在せず婚姻により氏も変更されない外国人配偶者の場合と異なり、日本人配偶者間の子の場合は、両親の戸籍上の氏は新姓で統一されており子も戸籍上の氏しか持たないため、片方の親の通称を選択できるとする根拠が乏しいと考え、採用しませんでした。これも議論の余地はあると思います。

3. 広く両派からのご批判を乞う!

この修正版「選択的夫婦別姓別氏」制度のアイデアについては、既にコラム「夫婦別姓と家族の一体性は両立可」で紹介したとおり、商業登記法です。結婚により姓を変更された方が役員登記する際には旧姓との併記が既に可能になっています。それなら、戸籍に併記した方が合理的だよね、と考えた次第です。

そもそも、2年前の年末12月16日の最高裁判決は、原告が主張した「姓の変更を強制されない権利」を「憲法上保障されたものではない」と退ける一方、選択的夫婦別姓制度についても「合理性がないと断ずるものではない」と付言し国会での議論を促しました。ぜひ今国会で議論していきたいと存じます。

私の案は、家族の一体性を重視しその根拠を家族のインデックスたる「氏」とそれを支える戸籍制度に求める保守派の主張と、女性の権利を声高に叫ぶ左派の主張との両方に目配せしながら、婚姻前の旧姓を社会的に使い続けたいという切実なニーズに応えようとするもの。広く両派からの批判を乞う次第です。


編集部より:この記事は、衆議院議員・足立康史氏の公式ブログ 2018年1月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は足立氏のブログをご覧ください。