私の読書法、「ながめ読み」「再読」「刻み読み」

昨今はあまり見かけませんが、昔は「数千冊の本を読破!」というように、読破した書籍の数を誇っている人がいました。
読破した書籍の数だけ知性が身についているということを示したかったのでしょう。

多数の書籍を読破することは、それだけでもたいそうなことです。
何もしないよりよほど時間を生産的に使っていると言えるでしょうし、得られるものも多いのでしょう。

私自身、以前、1日最低1冊は読もうとノルマを決めて読んでいた経験があります。
分厚い本でも、とにもかくにも読破してしまうのです。

こうなると、もはや「ななめ読み」ではなく「ながめ読み」になってしまいます。

昨今の書籍は親切にレイアウトされているので、「ながめ読み」でもかなりの情報がインプットできます。
試しに、新書一冊を20分で「ながめ読み」してみて下さい。

読む前に比べれば、その本に書いてあることが「おおよそ理解できる」程度にはなっているはずです。
慣れてくると、リアル書店の立ち読みだけでかなりの知識を得ることができるようになります。

立ち読みで「ながめ読み」をした後は、お返しとして、1,2冊買うことも忘れないでくださいね。

このような「ながめ読み」とは別に、再読すべき書籍を何冊か持っておくと読書の質が向上します。
専門知識であってもどんどん忘れてしまうので、時を見てパラパラと再読しておくと新たな発見があるものです。

我妻栄先生の「民法案内」などは、再読するたびに後頭部をぶん殴られるようで、我が身の未熟さを痛感させられます。

経済学では、石川秀樹先生の「経済学入門塾」神取道宏先生の「ミクロ経済学の力」を、法と経済学の分野では「法と経済学」(クーター、ユーレン)を、ファイナンス理論では「コーポレートファイナンス」(ブリーリー他)をパラパラと再読しています。

どっぷり浸かった法律と比べて理解度は圧倒的に薄いですが、気にせずパラパラです。

小説や漫画も、ときどき無性に読みたくなる作品があります。
最近は電子版になっているので助かりますが、私の一番の愛読書「姿三四郎」が絶版になった時は本当に困りました。漫画も「うる星やつら」「らんま1/2」など、暇な時にパラパラ再読しています。

専門的な書籍を別にすれば、読書は娯楽の一種ですので、どんな本を読んでもいいと思います。

名作と誉れ高きドストエフスキーの小説は、セリフがやたらと長くてまどろっこしいので、合わない人が無理して読む必要はありません。

ボリュームの多い書籍は「刻み読み」がお勧めです。
毎日数ページをノルマにして、読んでいくのです。

通勤電車は絶好のペースメーカーなのですが、昨今は文庫本がスマホにとって代わられました。通勤時間の「刻み読み」で、私は山崎豊子先生の「華麗なる一族」「不毛地帯」「白い巨塔」などを全巻読破しました。

「続きが読みたくて仕方がなくなる」文章力のおかげです。専門を持っておられる方は、「学びて時に之を習う」とあるように、常に専門知識をブラッシュアップしておく必要があります。

しかし、仕事とは関係がなければ、何を読んでもいいと思います。
途中でつまらなくなれば止めてしまって別の本に移りましょう。

最初の4分の1くらい読んでつまらない本は、たいてい最後までつまらない本です。サンクコストとして割り切りましょう。

以上、「ながめ読み」「再読」「刻み読み」が最近の私の主な読書法です。
もちろん「精読」「熟読」もあるし「ななめ読み」もありますが、メールチェックやSNS等で小刻みな時間を取られる昨今、3種類の読み方が増えてきました。

読書時間がないと嘆いている方にとって少しでも参考になれば幸いです。

荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年2月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。