カタルーニャに「タバルニア自治州」が誕生するかも

白石 和幸

LA GACETAより引用

最近、スペインの報道メディアで話題になっているのが『タバルニア(TABARNIA)』という自治州の創設運動である。カタルーニャの独立問題でスペイン社会が揺らいでいる中で、今度はタバルニア自治州の創設が取り沙汰されるようになっている。

実は、タバルニアというのはカタルーニャの独立運動に反動した動きなのである。即ち、カタルーニャの州民が全員が独立を望んでいるのではない。寧ろ、カタルーニャの独立を望んでいない人の方が僅かに多い。それは選挙の度に独立反対派の票数が独立派を上回っていることから理解できる。正に独立を望んでいない市民がタバルニアという自治州を創設す用意があるということなのである。

タバルニアの創設を主張する人の多くが指摘しているのは「Barcelona is not Catalunya」ということなのである。1992年のバルセロナ・オリンピック以降、バルセロナは国際都市として成長した。「BARCELONA」というのが一つの都市ブランドとして尊重されるまでに成長している。それを具体的に示すかのように、「Made in Spain」よりも「Made in Barcelona」の方が国際的により気品があって高い評価を得るまでになっている。

ところが、カタルーニャの独立運動が騒ぎ立てられるようになってからは、「BARCELONA」というブランド・イメージが国際的に損傷してしまった。先の、州議会選挙でも明らかにされているように、バルセロナの市民の間では独立反対派の方が独立支持派よりも得票数において上回っていた。即ち、バルセロナではスペインの一部を構成するバルセロナでありたいと望んでいる市民の方が独立を望んでいる市民よりも多くいるということなのである。だから、バルセロナの多くの市民は「バルセロナは独立を望んでいるカタルーニャではない」ということを広く喧伝したい望んでいる。

同様の現象がバルセロナから南に隣県しているタラゴナでも見られる。そこでも、独立反対派の方が独立支持派を上回っている。

そこから、TARRAGONAとBARCELONAの二つの県名のルーツをラテン語に求めて「Tarrco」と「Barcino」とを掛け合わせて『TABARNIA』という名前が誕生したという訳である。

今回の州議会選挙で独立反対派と独立支持派の得票率はそれぞれ51%に対し48%と反対派が3%ほど多く得票していた。しかし、議席数においては独立支持派が70議席、反対派が65議席という結果になっている。その理由はバルセロナとタラゴナの2県とは別に「リェイダ(LLEIDA)」と「ジロナ(GIRONA)」の2県で独立支持派が議席数でより多く獲得しているからである。

例えば、バルセロナで当選するには4万票が必要であるが、リェイダでは2万票で十分なのである。

独立気運の高い内陸部のリェイダとジロナが独立派の地盤ということで、バルセロナでは当選できない得票数でも、この内陸2県では当選できるのである。選挙法の改正を行って、その矛盾の格差を是正する必要があるが、これまで独立支持派が政権を握って来た関係で、その格差を是正することに関心が薄かったということなのである。

独立支持派はスペイン政府がカタルーニャから徴収する税収に相当するだけの交付金をカタルーニャに支給していないと批判している。が、タバルニア支持派が指摘しているのは、独立支持派はカタルーニャの内陸部への無駄な投資には触れない傾向があるという。バルセロナから内陸部に行くには有料道路を利用せねばならないのに対し、この2県を繋ぐ内陸部での移動には有料道路は存在しない。この2県にある空港も無駄な税金が使用されて出来た採算ベースに乗らない空港である。交付金の無駄使いをして来たのは正に独立支持派の政権であった。

そして、独立運動の影響でバルセロナに本社を置いていた企業が州外に本社を移転させるという事態になっている。その数は3200社を超えている。この現象もカタルーニャ独立運動が起きていなれば、バルセロナは今も経済成長で後退することはなかったはずである。

処が、独立運動のせいで独立を望んでいない市民がたくさんいるバルセロナは経済の後退を余儀なくさせられている。

タバルニアというのは、独立賛成派がカタルーニャを独立させようとするのであれば、独立反対派が過半数を占めるバルセロナとタラゴナはそれに反対して、スペインの新しい自治州タバルニアを創設する意思があるといっているのである。