憲法改正、護憲の前に、憲法についての知識を!

岩田 温

日本国憲法について、改正すべきなのか、一字一句そのままに死守すべきなのか。大きな政治的テーマなのだが、こういう問題に関して、民主主義国家の弱点が現れることが多い。集団的自衛権の行使容認を巡る議論のときを思い返してほしい。拙著『「リベラル」という病』でも詳述したが、「集団的自衛権の行使容認によって徴兵制がやってくる」等々の極端な意見が飛び交っていた。だが、実際にこの問題について理解している国民は少なかった。

専門家同士が意見をたたかわせるのだが、国民はあまり関心がなく、繰り返し宣伝される極端な見解に影響を受けてしまうという現象である。冷静になって考えてみれば、「個別的自衛権」、「集団的自衛権」、「集団安全保障」の区別がつかない国民が多い中で極端な議論だけが先行している印象があった。テレビ、新聞でもあまりに極端な意見が多かった。

日本国憲法の改正問題についても同じことが言えそうだ。「九条を変更すれば、日本は戦争する国になる!」と大騒ぎしている人がいるが、この人のいう「戦争」とはいったい何のことなのだろう? 日本を攻め込んでくる国があるとすれば、現在の憲法九条を有しながらも、日本の自衛隊は祖国を守るために戦う。その意味で、改憲によって「戦わない国」から「戦う国」へと変化するなどという議論は、そもそも極端な議論以外のなにものでもないのだ。

そもそも日本国憲法はどのような状況で作られ、日本国民に迎えられたのか、現在の日本国憲法を死守することのメリット、デメリットは何なのか。この辺りを冷静に議論したうえで、改正すべき、改正すべきでないと考えるのが妥当だろう。憲法九条で「戦力」と「交戦権」が否定されながら、自衛隊が存在するとはどうしてだろうか?

2月17日午後2時から大阪市中央公会堂で、憲法についてのイベントを行う。このイベントでは改憲すべき、すべきではないといった議論をするつもりはない。議論の前提となる事実を提示し、学天即さん、居島一平さん、そして参加者の皆様ともに考えたいと思っている。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

「リベラル」という病 奇怪すぎる日本型反知性主義
岩田 温
彩図社
2018-01-30

編集部より:この記事は政治学者・岩田温氏のブログ「岩田温の備忘録」2018年2月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は岩田温の備忘録をご覧ください。

【岩田温さん登壇イベントのお知らせ】
「いまさら聞けない憲法のはなし」

今年、いよいよ本格化する憲法改正への議論。
この歴史的な変動の時期を迎え、一般社団法人日本歴史探究会では、現行の日本国憲法における基礎的な内容や問題点を老若男女問わず、わかりやすく、楽しく、気軽に学べるイベントを開催します。入場無料です! ご招待状が必要なので必ずお申し込みください。

こちらからお申し込みください。

ナビゲーター : 岩田温
スペシャルゲスト: 学天即 居島一平

日にち:2018年(平成30年)2月17日(土)
開 場:13時30分
開 演:14時
終演予定:16時
会 場:大阪市立中央公会堂
入場費:無料(ただし招待状を持参)
主 催:一般社団法人 日本歴史探究会
後 援:大阪府教育委員会