働き方改革国会に、みんなもっと怒っていいと思う

常見 陽平

裁量労働制をめぐり、娘に精神講話したら嫁に「やめなさい」と言われた。しかし、私はやめない。

この件、データ問題が燃えている。「策士策に溺れる」ではないが、一本化したがゆえに、長時間労働是正や、同一労働同一賃金、有給5日取得義務なども提案が遅れることになる可能性がある。さて、与党はどう説明するのだろう。

おおたとしまさ
イースト・プレス
2017-11-17


おおたさんとの対談本でも書いたが、結局、働き方改革なるものの本丸は、抱き合わせにして、「柔軟な働き方(とされる)」高プロ、裁量労働制拡大を飲ませるためのものではなかったのか。

働き方改革実現改革での労使の懐柔、法案の一本化、すべて裏目に出た。さらには、それぞれの案件については議論不足。

もっとも、このブーメランは野党にもとんでくる。「対案を出せ」と。単に法案提出を見送らせるだけではなく、そもそもの次の労働社会をどうするかという本質論が必要だ。

さらに、そもそも論でいうと、今回の法案が通ったところで、働き方改革実現会議で議論、提案したことや、安倍首相が施政方針演説で語ったことが十分に達成できない点について、自民党支持者も含めて批判するべきだ。

同じく与党である、公明党はまっとうな中道政党だとしたならば、裁量労働制の拡大や高プロ、さらには働き方改革そのものについて、どう考えるのか。ここはまっとうな意見を言って頂きたい

これを機会に、経団連代表、副代表は、なぜ裁量労働制拡大や高プロに賛成なのか、具体的な説明をするべきだ。メディアは積極的にマイクをむけるべし。なぜ、これらの人事制度だと、パフォーマンスが上がるのか、柔軟に働けるのか、対象者はどれくらいなのかを具体的に説明させろ。単にコストダウンの論理にしか見えない。

そもそも、「柔軟な働き方」なるものが「硬直化」するリスクについても、警鐘を乱打し、闘いを爆発させるべきだ、野党は。裁量労働制はそもそも、「始業および就業の時刻の決定」が労働者に委ねられている。今度の法案でもそれがより明確化される。ただ、そのような運用は「必ず」守られるのか。

高プロ、裁量労働制に関して、健康関連のルールや、労使委員会によるしばりなどが設けられているがそれが機能するかどうか。逆に推進論者からして、これらのブレーキが、もともとの制度の趣旨に見合うかどうかという議論も必要だ。要するに議論不足。与野党ともに、足の引っ張りあいではなく、次の労働社会の全体像を示せ。

総合的な提案であるがゆえに一括提案といいつつ、その次の労働社会像が見えないのは、何かを隠しているとも言えるし、そもそも論で、自民党の厚生労働部会が一枚岩でないことを物語っていないか?邪推ではあるが。

働き方改革の旗振りをしていた人々は思想難民化していることだろう。裁量労働制のデータに関する市民の怒りは燎原の火のごとく燃え広がりつつある。野党とメディアは実態を完膚なきまでに暴き出し、歪曲を突き破れ。

今ここで起ちあがらないならば、民主主義の危機さえ招くことを直覚し、重大な決意を燃えたたせ、強固な意志と固い団結をもち決起せよ。


最新作、読んでね。社畜を礼賛しているわけではないよ。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2018年2月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。