僕の秘書は、金沢に住みながら毎日東京に「ロボットで出社」

僕の秘書が金沢に住んでいて、金沢で働いていることは、以前のエントリーでご紹介しました。

で、その金沢にいる秘書が、最近ロボットなんです

っていってもなんのことが分からないと思いますが、その秘密を秘書自身が書いた記事でご紹介します!


こんにちは、フローレンススタッフの須田です!

ここ!ここでーす!iPadの画面からですーー!!

はい。

改めまして、フローレンスで駒崎の秘書業務などを担当している須田(だーすー)と申します。

普段は金沢に住んでおり、リモートワークで働いています。

この度、フローレンスでは遠隔プレゼンスロボット『Double(ダブル)』を導入しました。

またまた新しいもの好きのフローレンスが何か始めたぞってお思いでしょうか?

実はこのDouble導入には、深~~~~~い理由があったのです!

Double導入のきっかけ

2017年12月26日。

この日は駒崎が不定期で出演しているTOKYO-MX『モーニングCROSS』の出演日。

ここで運命の出会いがありました。

この日の共演者、IT批評家の尾原和啓さんが「ロボット活用で見えてくる”今後の可能性”」について解説され、そこにDoubleを連れてきていたのです。

Doubleとは、インターネットを経由してリモートで動かせる分身ロボット。ロボットといっても、本体は小さなタイヤと棒、そしてその先にiPadがついていて、iPadが常時Skypeのようなビデオ会議がオンになった状態、という感じ。遠隔地にいるメンバーのかわりにDoubleが動いて、iPadを通して会話ができるという仕組みです。

駒崎と、尾原さん(写真向かって右)と、Double

番組では、尾原さんはDoubleを導入している小学校の事例を紹介されていました。

難病で寝たきりの小5、分身ロボで「登校」…遠隔操作で生徒会、かくれんぼも : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)

そして駒崎はひらめいたのです。

「これは障害のある人の雇用に役立つのでは!ひいてはヘレン・アニーの子たちの就労に役立つのでは……!」

思い立ったが吉日。

尾原さんに頼みこみ、尾原さんがお持ちのDoubleをしばらくお借りし、その使用感をフローレンスで試すことなりました。

Double導入にあたって駒崎から社員に送られたメールがこちらです。

Double導入の経緯を解説した駒崎の週報  (※週報:週1回、事業の方向性や注力している取組などが書かれた駒崎から社員に流れるメール)

そしてDoubleがやってきた

Doubleトライアルは金沢で遠隔勤務中の私、須田が担うことに。

こうして年明けの1月11日。Doubleがフローレンスの神保町オフィスにやってきました。

まずは試しに、駒崎が使ってみることに……。

さっそく駒崎がトライしたときの様子。 Doubleに設置されたiPadには、パソコンからDoubleを操作している駒崎が映っています。

パソコンでDoubleを操作し、変顔中の駒崎。

Doubleの操作はキーボードの十字キーで、前進・後退・左まわり・右まわりを操作します。

多くのスタッフが駒崎in Double を写真に収めていました。

Doubleを使ってオフィスを歩いてみた

いよいよ私・須田が金沢からDoubleを使ってみることになりました。

IDを入力し、ログインした先には、神保町オフィスの景色が広がっていました。

いつも利用しているWEB会議システムよりも視野が広い!

だれが出社してるか、グループウェアを検索しなくてもひと目でわかる!

(しかも、今電話しているとか、忙しそうとかまでわかる……)

そしてこのDouble、一番すごいのは、オフィスを自分の足で歩けるということです。

 

距離感を掴めずソファに近づきすぎることも…。

足元を写すカメラを見ながら、障害物を避け、オフィス内のみなさんに挨拶して周りました。

とはいえ、うろついているばかりでも仕事にならないので、オフィスの一角に佇み、仕事を始めることにしました。

ミーティングに参加してみた

リモート勤務者でもミーティングに参加しています。

この日は広報・秘書のミーティングがあったので、会議室まで自分で移動します。

これまでもWEB会議システムを利用して会議に参加していたのですが、複数人参加している会議でも、WEB会議に接続してくれている人、ひとりの顔を見ながらのことが多かったのです。

それがDoubleだとこう!「オフィスにいること」をイメージした広角カメラのおかげで、参加者全員の顔や様子を見ることが出来るんです。

神保町オフィス側ではこのような状況になっています。

会議自体は、議事録もGoogleドキュメントで共有されており、オンライン上で共有されているので同時編集も可能です。

会議が終わったら自分でまた移動し、執務スペースに戻ります。

急なタスクを受け取ることも可能

1月は感染症が流行する時期とあって、病児保育事業部の事務局も大忙しです。

病児保育事業部の一角に佇みながら、自分にも出来ることは何かないだろうか…ともどかしい思いを抱えていた、そんなとき。

Doubleを通して声をかけられました。

「すださーん!今、急ぎのタスクやる時間的な余裕、ある?」

「はいはーい、大丈夫ですよ~」

「良かった!サイトにお知らせを掲示してほしいんです!文面の内容は…(内容説明)。私、今から子どものお迎えでもう出ないといけないので……」

「わかりました、急いで文面作るので、ハングアウトで確認してもらえますか?」

こういう急ぎのタスクを依頼するとき、文面を打つのは大変なのですが、口頭だとすごく早くて、ニュアンスも伝わりやすいんですよね。

なので、ついつい、そこにいる(オフィスに出勤している)スタッフに声がかかりがちなのですが、Doubleはその壁を超えました。

常に繋がっていて、すぐ話しかけられる状態、というのは、遠隔で勤務しているスタッフにも同じようにタスクを振ることになり、ひいては「貢献できている」というモチベーションのアップにもつながるのだと感じました。

お互いの状況をシェアする

Doubleは仕事だけではなく、雑談にも有効です。

東京に雪が降った日には、

「だーすーさん、雪見る?」

と雪を見せてもらったり。

「ランチしよう!」

と呼びかけて一緒にランチタイムを過ごしたり。

須田側の画面。ランチスペースに沢山のスタッフが集まっているのが分かります。

神保町側から見た様子。この日の昼食、ラーメンだったのですが、スピーカーを通してラーメンをすする音も丸聞こえだったそうで・・・

また、仕事中、咳き込んでいたら、

「だーすー、大丈夫?風邪?」と心配してもらったり。

お茶を飲んでむせていただけなんですが……でも、いつも一人で仕事をしている身には、そんなちょっとした声かけも嬉しかったりします。

そんなこんなで、Doubleは「すだ+ダブル」で「すだぶるちゃん」という愛称まで付けられ、神保町オフィスで今日も働いています。

病児保育事業部のマネージャーも、「もっと距離が縮まった」とDouble導入を評価しています。

駒崎の週報へのコメント。遠隔勤務者側だけでなく、オフィス側にもメリットを感じてもらえました。

Doubleの良さ/課題

ここで、実際に使ってみてのDoubleの良さと課題をまとめておきます。

Double、ここが良い!

・急ぎの案件の対応を依頼しやすい/受け取りやすい

・「今電話してもいい?」といった確認なく、声をかけられる

・オフィス内を動き回ることで、普段仕事で関わらないスタッフと話すきっかけができる

Double、ここが課題

・オフィスが2フロアの場合、人がいないと移動できない(さすがにエレベーターのボタンを押したり、ドアを開けたりはできない)

・充電が切れるとアダプターにつなげながらの利用となり、動けない

・ルンバのように自分で充電元に戻ることはできない

・集中して作業したいときはオフィスの雑音が気になる(そういうときは意図的に接続を切ったり、音量を下げたりという時もあります)

まだ改善の余地がある部分もありますが、Doubleがあることで、お互いの状況をシェアしやすくなり、雑談をしたり、ランチをともにしたりと、オフィスに出勤しているのと変わらないような状況を作ることができます。

反対に、Double利用中は「オフィスの電話の着信音や雑音なく、集中して仕事に取り組める」という在宅勤務のメリットは薄れます。

在宅勤務の良さを活かすために、時間や日を決めて使うといったことも必要だと感じました。

障害があったり、物理的に出社できない人と働くということ

こういった遠隔プレゼンスツールや、WEB会議システムを活用すれば、「障害があって通勤が困難」であったり「家族の転勤に帯同していて海外住まい」といった、物理的に出社が困難な人と一緒に働き続けることも難しくありません

さまざまなバックグラウンドの人とチームを組んで仕事をしていくことは、これから増えていきますし、そんな世の中にしていきたいとフローレンスでは考えています。

今回、こういった遠隔プレゼンスツールによって、神保町に勤務するスタッフも、遠隔勤務者との心理的な距離を縮めることができました。

また、遠隔勤務者である私も、神保町オフィスにいるスタッフからの仕事の依頼をスムーズに、そしてリアルタイムに受け取ることで、「流行期の忙しいときに貢献できた」という一体感を得ることができました。

こんな素敵なツールを、快く貸してくださった尾原さんに、この場をお借りしてお礼を申し上げます。本当にありがとうございます!

今後も、フローレンスではテクノロジーを活用しながら、障害の有無やバックグラウンドに関わらず、多様な人たちと、多様な働き方をできるように働き方改革を進めていきます。


……ということで、秘書がロボットになった背景や狙いなどをお伝えしました。

記事内でも触れていますが、僕はフローレンスが提供している障害児保育園ヘレンや障害児訪問保育アニーを利用している子たちが、成長したら一緒に働くことを夢見ています。

テクノロジーを活用すれば、障害があったとしても一緒に働けるし、一緒に社会を変えていけると信じているから。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年2月21日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。