民泊の規制と緩和は「生活環境の悪化防止」と「国際交流の推進」、相反するものをどう扱うかの議論でしたが、中野区ではアウフヘーベンに成功しました。
住宅宿泊事業法いわゆる民泊新法が2018年6月15日より施行され、民泊ホストは自治体に届出することで年間180泊を上限として、住宅の空き部屋に旅行者を合法的に宿泊させることが可能となりました。
中野区の現在の民泊の実態に関しては以前、アゴラで「条例が民泊を殲滅する」でも書きましたが、民泊による①時間・場所関係なしの騒音、②無秩序なゴミ捨てなどの問題点が挙げられ、生活環境の悪化が懸念されていました。しかしホテルが23区中22位のホテル数である中野区においては民泊利活用の外国人来訪によるインバウンドなど国際交流の推進もまた魅力的でありました。
そこで両者を成立すべく、新宿区・世田谷区などの事例に則り、当初、中野区も住宅専用地域において週末・祝日のみ民泊営業が可能とすると考えました。しかし中野区の民泊の実態を分析したところ、4連泊以上の利用が55.6%でありました。週末・祝日のみの条例となれば、現行の売上の1割を下回るとの概算が出ました。誰も事業を続けられるものではなく、「国際交流の推進」は成立不可能とわかりました。
そういった経緯の中で中野区は2018年2月22日、中野区議会第1回定例会において「中野区住宅宿泊事業の適正な実施の確保に関する条例」が可決されました。
(一部抜粋)
「区長は、届出住宅の居室の数が住宅宿泊事業法施行規則(平成29年厚生労働省令・国土交通省令第2号。以下「省令」という。)第9条第2項に規定する 居室の数を超えず、かつ、当該届出住宅に宿泊者を宿泊させる間に住宅宿泊事業者が不在(同条第3項に定める不在を除く。)とならずに実施される住宅宿泊事業 で、規則で定める要件を満たすもの(以下「家主同居型住宅宿泊事業」という。)については、制限区域における第1項に規定する住宅宿泊事業を実施してはならない期間においても、家主同居型住宅宿泊事業の実施を許可することができる。」
この一文により家主同居型の事業者は祝日・休日限定ではなく、年間180日ルールが適応されるわけです。いわゆるホームステイ型であれば、オーナーがしっかりと管理するため、騒音・ゴミ捨てなどの問題点をクリアできる上に国際交流も図れます。そして同居型によるルール緩和が届出ではなく、許可制で行われるものであることが最も重要であります。近隣住民からクレームが出ないように事業をできなければ許可を取り消すことができるわけです。この許可制は他自治体には見られない先進事例であります。
国の対応が遅れ時間がない中、パブリックコメント、区議会の意見を包括的に集約し、素晴らしい条例を作成された職員の不断のご努力に対して、感謝をするところであります。
ちなみに日本共産党議員団はいろいろ文句をいいながら条例案を反対、条例はいらないと態度表明をいたしました。条例がなければ、民泊を作りたい放題となるわけで、結果的に生活環境の悪化を招くのみです。何でもかんでも反対というスタンスは、条例の中身を理解していないことを露呈させました。
加藤 拓磨(たくま)中野区議会議員
1979年東京都中野区生まれ。中央大学大学院理工学研究科 土木工学専攻、博士(工学)取得。国土交通省国土技術政策総合研究所、一般財団法人国土技術研究センターで気候変動、ゲリラ豪雨、防災・減災の研究に従事。2015年中野区議選で初当選。Facebook Twitter HP