甘い期待は終了、大転換点を迎える米国の対中政策 --- 古森 義久

米国の中国に対する「関与」政策が終わりを告げようとしている。中国との協調を進めれば、やがては中国が国際社会の責任ある一員となり、民主化に傾くだろうという期待のもと、米国歴代政権は対中関与政策をとってきた。だが、その政策が失敗と断じられるようになったのだ。米国は約40年前の中国との国交正常化以来、対中政策の基本を初めて修正するという歴史的な曲がり角に立ったといえそうだ。

米国の対中関与政策を踏みにじってきた中国

1979年の米中国交樹立以来、米国の歴代政権の対中政策の基本は「関与(Engagement)」だった。中国は米国とは基本的に価値観を異にする共産主義体制であるが、関与政策では、米国が中国をより豊かに、より強くすることを支援し、既成の国際秩序に招き入れれば、中国が自由で開かれた国となり、国際社会の責任ある一員になる――というシナリオが描かれていた。

ところが最近の習近平政権下の中国の動きは、米国側の期待とは明らかに反対方向に向かいつつある。その象徴的な動向が、国家主席の任期の撤廃だった。習近平氏には終身の主席となる道が開かれた。民主主義とは最も逆方向の流れである。

それにとどまらず、近年の中国共産党政権は、侵略的な対外膨張、野心的な軍事力増強、国際規範の無視、経済面での不公正な慣行、そして国内での弾圧と独裁の強化など、米国の対中関与政策を踏みにじるような措置ばかりをとってきた。

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