先日、私はタイから来日した経営者21名を相手にサーバントリーダーシップの研修を実施しました。
これは一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS)からの依頼です。AOTSでは、日本がODA支援している開発途上国に対して、人材育成を通じて、日本と海外諸国相互の経済発展に貢献するとともに、友好関係の増進にも寄与することを目的としています。
昔は日本で学べるとなれば、我も我もと手が上がりましたが、ドイツはじめ他の先進国との誘致競争も激しく、また残念ながら日本への憧れが減少しており、積極的にプレゼンをしないといけない状況のようです。
人口減少から需要減が避けられない日本にとっては、途上国でビジネスを拡大することが不可欠な状況です。ですから、途上国に日本のファンを増やすためにも、この事業は極めて重要なのです。
ほっておくと、全て中国シンパになってしまいますから。
そうは言っても、技術教育はやはり日本への信頼性が高いものの、リーダーシップ教育となると、非常に厳しいものがあります。
「なぜ、日本でリーダーシップを学ぶ必要があるのか?」
依頼を受けた私が思ったくらいです。
実際、やはりリーダーシップを学ぶなら米国に行く人が多いようです。
では、途上国各国の人に「なぜ、日本でリーダーシップを学ぶ必要があるのか?」をどうプレゼンしているのでしょうか?リーダーシップコースを設計している、福島に所在するいわき明星大学の大嶋教授に直接聞いてみました。
「それは、日本が3.11を経験しているからです」という答えに、恥ずかしながらすぐには意味が分かりませでした。
「タイでもインドでもエジプトでも、世界の人たちは、3.11で日本人がどう行動したかを覚えています。権限のない市井の人が、状況は少しでも解決するために、恐怖の中で自ら立ち上がり行動したのです。多くの人が自分自身が大変な状況の中で、他の人のために行動したのです。これが日本人のリーダーシップです。その姿を世界の人は今でも覚えているのです。」
私は正直、恥ずかしかったです。そんなことにすぐに気づけないくらい、私の中で3.11が風化していたことに。
でも、ベトナム、ラオス、カンボジア、インド、エジプト……など様々な途上国の人たちは、アメリカでは学べないリーダーシップが日本にあるとリーダーシップコースに参加しているのです。
今回は、タイ人だけで2週間のプログラムでした。
日本ならではのリーダーシップを学ぶため、トヨタ自動車や、松下幸之助の松下記念館、京セラの稲森さんの稲森ライブラリー、渋澤栄一の渋澤記念館などにも出向いて学んでいます。
それ以外の日には、様々な有名講師が駆けつけています。私と同じくほぼボランティアだと思われます。
それだけ、この事業が日本の将来にとって重要だからでしょう。
閉校の前日、私はサーバントリーダーシップという切り口で終日ワークショップを行いました。状況を変えるために、誰かに頼るのではなく、自分が勇気を持って行動を起こす。
自分のため以上に、他の人のために、行動する。まさに3.11で東北の人たちが実践したリーダーシップはサーバントリーダーシップでした。私たちは、そのことを誇りに思い、受け継いでいかなくてはいけないのです。
真田 茂人 リーダーシップ教育コンサルタント/日本サーバントリーダーシップ協会理事長/株式会社レアリゼ 代表取締役