各国教員が進める教育でのICT活用

各国の初等中等学校では、どのようにICTを活用した教育が進められているのだろうか。各国教員のポスター発表からいくつか紹介しよう。

第一は、子供たちに基礎知識を提供する教育。

ボスニアヘルツェゴビナでは教員のおよそ1/4しかWordやExcelが使えない。そこで教員への訓練を実施し、子供たちを教えられるようにした。多くの人々が西欧で仕事に就くこの国で、子供たちによりよい就職機会を与えようとこの事業に政府予算が投じられている(A. Begićの展示)。

スリランカでは子供たちのネット被害が問題になっている。そこでS. Maithripalaはスカイプを用いた遠隔講義システムを立ち上げた。講義の最後に簡単な○×クイズを行う。クイズ四問は次の通り。「悲しいことや困ったことが起きたら、身近な信頼のおける大人に相談する」「氏名などをネットで人に渡す前に、身近な信頼のおける大人に相談する」「ネット友達と直接(オフラインで)会うことはない」「ネットのエチケットを守り、狂暴にはならない」

第二は、子供たちの積極性を培おうという教育。

教員に質問したいことがあったら、帰宅後でも連絡が取れるように、サウジアラビアの教員I. A. Aljabriはメールの使い方を子供たちに教えた。たくさんのメールが来るので応答は大変だが、子供たちの学習意欲が高まり積極性が増したそうだ。

ナイル川の環境汚染を減らそうと、エジプトの中学生がプロジェクト型の学習を行った。現場調査とネット調べを組み合わせて汚染の原因が養魚場と突き止めた学生たちは、県知事にそれを訴えた。県政府が動き、1000以上の養魚場が閉鎖されたそうだ(M. E. Gebaの展示)。

このようなプロジェクト型の教育は世界各国で実施され、カナダでは、8歳児にも自分たちでプロジェクトを進めさせるそうだ。これを説明したカナダの教員D. Kaylynは「Self-Directed Learning」とポスターに大きく掲げていた。

第三は、プログラミング言語などを教える教育。

トルコの小学校ではエジプト・ガザにあるピラミッドについて、歴史から正四角錐が構造的に安定なことまでを学んだ後、3Dプリンタでピラミッドの模型を作る授業を2週間で実施している。子供たちが興味を持つピラミッドを題材にすることで、彼らはプログラミングに積極的に取り組むそうだ(Y. E. Çalikの展示)。

Wordの使い方からプログラミングまで内容は様々だが、先進国から途上国まで国情に合わせた教育が実施されていることが分かった。カナダが8歳児にもプロジェクト型学習をさせているように、このような教育は低学年児童にまで世界中で広がっている。ポスター発表では、これらの教育事例を自信満々に話す教員の姿も印象的だった。

山田 肇
ドラえもん社会ワールド 情報に強くなろう』監修