もし、あなたがトヨタのレクサスのセダンを買うとしよう。
サイトで調べたところ、レクサスのセダンにはLS、GS、GSF、ISの大きく4種類があり、GSの中には4種類、ISの中には3種類の車種がある。
価格感応度が高い人、つまり価格に敏感な人なら一番安いグレードを買うことが多いだろう。
逆に、価格感応度が低い人、つまりあまり価格に左右されない人であれば高いグレードを買うことが多くなるはずだ。
ソニーデジタルカメラのαシリーズも複数のバージョンを取り揃えており、顧客の価格感応度に応じた品ぞろえをしている。
価格感応度というのは個人の持つ価格弾力性のことで、感応度が高ければ価格弾力性が高く、感応度が低ければ価格弾力性が低い。
価格弾力性が高いと購買行動が価格に左右されやすく、価格弾力性が低いと価格に左右されにくい。価格弾力性の低い米や野菜なのど生活必需品は、少々高くても買わざるを得ない。
レクサスやソニーのαシリーズは、いずれの顧客も取り込めるようバージョニングを行っているのだ。
これは個人のこだわりにも左右される。
車に強いこだわりを持つ人は、最上級グレードのレクサスを買い、さほどこだわりのないカメラの方はαシリーズの一番低いグレードを買うだろう。当然、逆もアリだ。
女性服のブティックというのは頻繁に見かけるのに、男性服の専門店をあまり見かけないのは、服に関する価格感応度が女性の方が低い(つまり値段よりも品物にこだわる)からかもしれない。
バージョニングでサービスと変えることできない典型例が映画館だ。
決まった時間には同じ映画を上映するしかなく、顧客によって商品の差別ができない。
映画館は「限界費用ゼロ」(顧客数が余分に一人増加してもかかる費用は変わらない)なので、常に満席である状態が望ましい。学生割引や子供料金ができたのは、どうせ費用が同じなら、一人でも多くの観客を取り込む目的から生まれた発想だそうだ。女性客を増やすために女性客の価格を割り引くところもある。
典型的例として、六大学野球の神宮球場の外野席を女性は入場無料にしている。
女性ファンを増やし、顧客層を厚くするために工夫だろう。カップルで来てくれれば、男性の入場料収入が得られる。
USJで実施したと記憶しているが、一定期間の小学生入場料を無料にすることもよくある手法だ。
小学生は必ず大人を連れてくるので、遊園地やテーマパークのように「限界費用ゼロ」に近い企業にとって、大人分の入場料と子供のおねだりの買い物によってプラス効果が大きい。
飲食店の中には、来店回数によって「出世」していき、地位が上がるたびにより豪華なサービス品を提供しているところもある。日替わりのサービス品を提供して「お得感」を出している店もある。
塚崎公義先生の著書にかかれていたように、食べ放題システムにしてコストを低くして利益を上げる方法も盛んに行われている。
歌手などのコンサートでは、よほど大きい規模の会場でない限り、チケット収入だけでは様々な費用を賄ってプラスにすることは難しいそうだ。
アーティストが関連グッズを一生懸命紹介するのは、グッズ販売で利益を出しているからだそうだ。
このように、業種業態によって様々な価格戦略が工夫されているが、個人的に納得いかないのがカラオケボックスだ。
「1人いくら何時間」で計算するより「1室いくら何時間」で計算するのがスジだと思う。大人数で入れば歌える回数は減るのに少人数で来たのと同じ金額が徴収される。これでは人数がまとまった時にカラオケに行こうという気にならない。
1室にたくさんの人数が入っても、流れる楽曲には限度があるし、飲食物の注文が増える分プラスになると思うのだが…。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年3月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。