東京都迷惑防止条例 改正の背景にある被害

写真AC:編集部

こんにちは、都議会議員の鈴木邦和です。22日、警察消防委員会にて「東京都迷惑防止条例」の改正案が、共産党を除く全会派の賛成多数で議決されました。この条例の改正に対しては、一部のメディアや市民の方々から、「デモや取材活動を制限するのではないか」等といった懸念の声があがっていました。

・市民活動や報道への規制、懸念も 都迷惑防止条例改正へ:朝日新聞
・都の迷惑防止条例改正案、委員会可決も懸念の声:TBS NEWS

初めに明言しておきますと、私は今回の改正条例が都民の自由や権利を侵害するものであってはならないと考えています。国の最高法規である憲法が保障する国民の自由や権利を、条例が犯すことは決して許されません。そういった前提に立って、私も今回の条例改正案の全文を確認しました。

今回の条例の改正内容はいくつかあります。まず盗撮の規制場所の拡大です。これまでの条例では、盗撮の規制は公共の場所や建物等に限定されてきました。今回の改正では、学校・会社などのトイレや更衣室、タクシーやカラオケボックスに拡大しています。これは小型なカメラが広く普及し、被害が拡大していることが背景です。

また、つきまとい行為について、これまで電話やFAXの送信に限定して規制されていましたが、電子メールやSNS等にも拡大となりました。さらに、つきまとい行為のうち、住居周辺をみだりにうろつくこと、性的羞恥心を害することが加えられました。ここまでは大きな異論は出ていません。

焦点となっているのは、つきまとい行為の類型に加えられた「名誉を害する事項を告げること」と「監視していると告げること」という条文です。これが「好意の(恋愛)感情」で行われることはストーカー規制法で取り締まりの対象となっているものの、「悪意の感情」で行われることは対象外でした。「悪意の感情」による行為とは、主に悪質な誹謗中傷です。

今回の改正で最も懸念されていたのは、この「悪意の感情」で「名誉を害する事項を告げること」や「監視していると告げること」が、デモや取材活動などの自由を制限するのではないか、という点でした。この条文について、疑念を持たれる方がいらっしゃるのは理解出来ます。

こうした懸念を受けて、先日の都議会の警察消防委員会で各会派から質問がありました。警視庁からは「正当な理由により行われる政治活動、労働運動、市民運動、報道、表現の自由、各種社会活動は取り締まりの対象にならない」という明確な答弁がありました。警視庁による都議会への答弁は大変重く、今後の運用を規定するものです。

そもそも今回の改正案は、なぜ警視庁から出されたのでしょうか。それは現行の条例では、救えない被害者がいるからに他なりません。警視庁は、2017年につきまとい等の行為に関する相談が約1万件寄せられたことを公表しています。当事者一人ひとりにとってつきまとい行為は、身の危険を感じる深刻な問題です。

今回の条例によって都民の自由や権利が侵害されるような事はあってはならないですが、一方で、こうした深刻な被害が現状放置されているということ、それによって救われない方々が沢山いるということにも、私たちは目を向けなければなりません。こうした被害の数々も考慮した上で、本条例の改正は必要と私は判断しました。

また、今回の条例は、東京都が全国に先駆けて改正しているという認識が一部で広がっていますが、それは誤解です。すでに多くの道府県で同等の「迷惑防止条例」改正が行われていますが、改正によって表現の自由が制限されたといったケースはありません。

最後に、もし本条例を根拠に「デモや取材活動などの自由」を規制する事態が万が一起きた場合には、私は本条例に明確な問題があるとして、再度の改正を議会で提案致します。本条例が被害者の助けになるよう、そして、都民の自由や権利を侵害することのないよう、引き続きこの条例の運用をチェックし、情報をお伝えしていきます。


編集部より:この記事は東京都議会議員、鈴木邦和氏(武蔵野市選出、都民ファーストの会)のブログ2018年3月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は鈴木氏のブログをご覧ください。