「大量食べ残しは金払ってるからいい」が全然良くない理由

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

このところ、2歳を間近に控えた長男を連れて、いちご狩りへ遊びに行っています。私は勉強がてら、できるだけ色んな農園へ行くようにしています。どの農園も独自の料金体系や、お客さんを楽しませる工夫があったりして、なかなか面白いものです。

さて、先日行った農園において、こんな写真が目立つところに貼られていました。

画像は筆者撮影

 

「いちごの先端だけ食べて残されている方がまれにいらっしゃいます。」と書いていますね。これを見た時に、「まだこんな食べ方をする人がいるのか…」と思い、気がつけば落胆にも似たため息が漏れていました。今から2年前の2016年、いちご狩りでいちごの先端の甘い部分だけをかじり、残りを全部捨ててしまう問題がネット上を駆け抜け、ちょっと騒ぎになった事を思い出しました。

今回のいちご狩りに限らず、大量の食べ残しは大きな問題になっています。飲食店などで大量の食べ残しをする様子がSNSで拡散され、ネットで炎上するのをあなたも見たことがないでしょうか?

大量食べ残し問題では、容認派と否定派に分かれていることがあります。「もったいないだろ!お店の人の気持ちを考えろ!」とブチ切れている否定派と、「代金をきちんと払っているのだから何が悪い!?」と容認派が反論しているという具合です。

フードビジネスに携わっている立場から、この問題について意見を述べてみたくなりました。

数々の大量食べ残し問題の炎上

大量食べ残しで過去に炎上したのは次のようなものです 。

「ビュッフェでケーキを皿いっぱいに盛り付けて記念撮影後、ほとんど食べずに残す。」

「某YouTuberがレストランで大量注文をして食べ残しをした。」

「回転寿司でネタだけ食べて、シャリは全部残して退店。」

「ラーメン店で大盛りを注文して半分残した。」

もしかしたらあなたも見覚え、聞き覚えがあるのではないでしょうか?

さて、大量食べ残しで問題になるのは食べ放題も、注文した都度支払いをする食事(以下、都度支払い)でも同様です。まず、ビュッフェスタイルで大量食べ残しが責められるのは当然でしょう。大量に食べ残しをされると、お店側は経済的、心情的にダメージがあるので言わずもがなです。しかし、都度支払いで大量の食べ残しをした場合はどうでしょうか?きちんと対価を払っていますから、店側に経済的ダメージはありません。「代金を払っているなら、どうしようとお客さん側の自由なのでは?」という容認派の意見も分からなくもありません。

しかし、「お店に対して経済的ダメージを与えなければいいのでは?」と主張している人は多くの人が怒り、炎上している理由を正しく理解できていないと思います。

炎上するのは問題の可視化と、傲慢な姿勢が原因

それでは次に、なぜ大量の食べ残しが炎上するのか?その理由を考えてみることにしましょう。

容認派は対価を支払っているので食べ残しても許されるといい、そしてこう続けます。「いやいや、お客さん側だけを叩くのは間違っていないか?お店側もフードロスを出しているのに、なぜ食材の廃棄は叩かれないのだ?」と。

この反論は確かに一理あります。食べ残しでフードロスを出してしまうのは、何も消費者側だけで起こっているのではないのです。例えば、コンビニでは仕入れて売れ残ったお弁当を廃棄していますし、レストランでも余った食材を捨てていますよね?お客さんが食べ残すと批判され、お店が廃棄しても叩かれない、この違いは「積極的・消極的姿勢の違い」と「フードロスの可視化」から来ていると私は考えます。

まずは、お店と大量の食べ残しをするお客さんとでは、「フードロスを出す姿勢」が全く異なります。お店側はできるだけフードロスを出さないために、最大限の努力をしているのです。私の経営しているフルーツギフトショップ「肥後庵」では、できるだけ在庫を持たない経営スタイルを取っています。これは言うまでもなく、廃棄ロスを可能な限り削減するための努力の一環です。そして、それはどこも同じでしょう。レストランでも、料亭でも、コンビニでも、どんな業態でも始めから廃棄するつもりで食材や商品の仕入れをする企業なんてありません。どのお店もコスト削減のために、廃棄ロスを減らす最大限の努力をしています。

ただ私の運営するお店はネットショップなので、ほとんど廃棄ロスを出さないようにすることが可能ですが、リアル店舗の場合はそうはいきません。必要分の食材を準備しても、完璧に来店客や必要量を予測することは不可能で、やむなく在庫や食材を廃棄することになってしまいます。そもそも食材や料理の在庫を持つことはお客さんのためです。在庫があるからこそ、お客さんが急に来店してもすぐに料理や商品を提供できます。お店が廃棄ロス覚悟で在庫を持つことで、私達の便利な生活を支えているというわけです 。

企業側は廃棄ロスを出さない努力をしている一方、大量食べ残しをするお客さん側はどうでしょうか?彼らは食べ残しを出さない努力をしていません。それはレストランで大量に注文して、ほとんど残してしまう例を見れば明らかです 。お店はお客さんの利便性のために消極的にフードロスを出してしまうわけですが、大量の食べ残しをするお客さんは「こちらはお金を払っているのだから、食べ残しをすることの何が悪い?」という自分本意で、お店側の気持ちを考えない「傲慢な姿勢」があります。この姿勢にこそ、第3者の人たちは激しく怒りを感じるわけです。

そしてフードロスの可視化ですが、お店や会社で廃棄される食材、料理はほとんど人目に触れません。ひっそりと店の裏で捨てられ、翌朝にはキレイに片付いているのです。反面、大量食べ残しは他のお客さんやお店のスタッフなどの目に晒され、時にはSNSですぐ拡散されてしまいます。極めて透明性が高いからこそ、炎上してしまうのです。

同じフードロスでも、お店側は消極的に出てしまいあまりひと目に触れず、お客さん側は積極的に出ておりひと目に付きやすいという違いがあるのです。

やっぱり食べ残す人が悪い

「食べ残し」と一言で言っても極端な食べ残しでなければ大きな問題にはなりません。エビフライに添えてあるパセリや、チョコレートパフェの下に沈んでいるフレークを食べ残して怒る人はあまりいないでしょう?

そうではなく、大量に食べ残すからSNSで拡散され、炎上し、一生懸命作ったお店の人を悲しませることになるのです。「お金を払っているからそれでいいだろ」というのは法律違反にはならないかもしれませんが、極めて傲慢な姿勢であり、倫理的に間違っていると思わずにはいられません。それにいちご狩りの食べ放題を提供している農園はこうも書いていました。「大量に食べ残しが続くと、食べ放題メニューの提供が出来なくなってしまうか、金額を上げざるを得ません」と。少数のマナー違反者のために、享受するお店のサービスが低下してしまうわけです。

大量の食べ残しを防止するには、お客さんが食べられる分だけを注文する、というあまりにも当たり前の姿勢を持つことで、快適な社会を作ることが出来るのです。

うーん、やっぱり大量に食べ残す側が悪いと思いますねぇ…私は。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。