東京は人口が増えているから安心…ではない理由

高幡 和也

すでに各報道でご承知のとおり、3月30日に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の地域別将来推計人口」によると、2030年以降は全都道府県で総人口が減少するとしている。また、2045年には東京都を除く全ての道府県で2015年の人口を下回るとのことだ。

誤解の無いように補足すると、東京都では2045年まで人口が「増え続けるのではなく」、2015年の人口を下回るのが2045年だとの推計である。

総務省によると、2016年の都道府県別人口増減率は前年比で7都県(東京都・沖縄県・埼玉県・愛知県・千葉県・神奈川県・福岡県)に人口増加が見られる。沖縄以外は大都市を抱える都県のみである。

その中でも東京都の人口増加率は0.8%と突出して高い。これは1980年の日本の人口増加率(0.9%)に迫る数字である。特に2000年からの増加率は、2011年からの3年間を除けばいずれも高い水準で推移している

だからと言って「東京は人口が増え続けているからしばらくは安心」なのだろうか?

確かに、東京都政策企画局の「2060年までの東京の人口推計」によると、東京都区部の人口は2030年にピークを迎えるまでは増加を続けると見込まれている。

様々なインフラが整備された都市に人口が集中することで生産性は上がり、さらなるインフラ投資も可能になるだろう。東京都でも空き家問題は顕在化しているが「人口増加」という現実が続く限りその危機意識は希薄になりがちだ。

「しかし」だ。地方の自然人口(出生・死亡による自然増減)の減少がもたらすものは、未来の都市の社会人口(転入・転出による社会増減)の減少をもたらすことに他ならない。

地方の自然人口減少が加速度的に進み、東京の人口が減少に転じた「その時」には、東京における高齢化、空き家、地価、インフラ投資、その他様々な社会問題がさらに拡大することは想像に難くない。

繰り返し言うが現時点の推計では、東京の人口が減少に転じる「その時」は2030年である。

人口集中によって都市が受けられる恩恵は永遠には続かない。何らかの歯止めがかからない限り、日本における「高齢化と人口減少」は一対であり、しかも一方向にしか進まないのだ。