マネックスのコインチェック買収で思い出した「情景」

内藤 忍

マネックスグループの仮想通貨のコインチェック買収が正式に発表され、昨日記者会見が行われました。マネックスは1999年の創業時から、グループを離れるまで、12年に渡りお世話になった会社です。

松本氏をはじめとする、新しい経営陣が並んだ記者会見(写真は日本経済新聞電子版から)を見て、ある記憶がフラッシュバックしました。

それは、1999年8月のマネックス証券の記者会見です。当時のマネックスはまったく無名の会社でしたが、ソニーとの共同出資ということで、話題になり、100人以上の報道陣が大手町に集まりました。創業者の松本氏と当時のソニー社長の出井氏が握手した写真が、マネックスの知名度と信用を高めていくきっかけになりました。その約2か月後の1999年10月1日にマネックス証券はネット証券として営業開始し、翌年には東証マザーズにスピード上場します。

今回の買収は、コインチェックという知名度の高い会社に、マネックスという上場企業の信用が加味されることになります。

1999年当時のインターネットといえば「危険」「怪しい」とネガティブなイメージが強く、安定しないシステムのトラブルで毎日のようにメディアに叩かれていました。20年の時が過ぎて、同じようなイメージでネガティブな扱いをされている仮想通貨。シンクロしているように私には見えます。

昨日の記者会見で、印象的だったのは、松本氏が、仮想通貨について金(ゴールド)と比較し「仮想通貨は時価総額800兆円とされる金の5%、重要な資産クラスになると考えている」とコメントしていることです。

資産運用の際の、アセットアロケーションの配分先として捉えていることです。

仮想通貨をトレーディングツールとして売買益を狙うのではなく、アセットアロケーションで考えるというのは、まさに今月発売される仮想通貨に関する新刊で、テーマとした内容です。

マネックス証券の他のネット証券にはない強みは、短期売買を繰り返すトレーディングではなく、アセットアロケーションによって、長期で資産を形成する分散投資に関する知見にあります。創業当初のマネックスのライバルは野村証券ではなく、ゆうちょ銀行だったのです。

他のネット証券が提供できない新しいアセットクラスをグループ企業で先行して提供できれば、その強みを再び発揮できるようになるはずです。

マネー(Money)のyを1つ先のxに進めてマネックス(Monex)。19年前にマネックス創業の新聞記事を見て、オフィスに遊びに行った時と同じように、マネックスの第2の創業に大きなエールを送りたいと思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年4月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。