84歳になった僕が、なぜAIに興味を持つのか?

4月15日、僕は84歳になった。世間ではとっくに現役を引退している年齢だろう。だが僕は、まだまだ仕事が楽しくて仕方がない。死ぬまで仕事を続けたい、と思っている。

その一方で、「死生観」というものも考えるようになった。先日も西部邁さん、そして野中広務さんが亡くなった。親しかった人たちが、一人また一人と鬼籍に入っている。

子供たちの世話になったり、長く入院して死ぬよりも、すっと死にたいと思っている。だから、自ら命を絶った、西部さんの気持ちもよくわかる。

いろんな人に話していることだが、「朝まで生テレビ!」の放送中に、「あれ、田原が静かになった」と思ったら死んでいた、というのが僕の理想の最期だ。「朝生」のプロデューサーは、「それだけは絶対やめてくれ」と言う。無理もない。だが、大好きな仕事を、その瞬間までやり続け、旅立つなんて、なんと幸せなことか。

つい最近まで、僕は、人工知能に関する取材を続けてきた。コンピュータが作物の収穫をする農作業ロボット、実用化に向かっている。囲碁や将棋の世界では、すでに人間はコンピュータに負けている。こういった特化型の人工知能ではなく、人のように考える「汎用人工知能」ができたら、はたしてどうなるのか。

そもそも、いったい「人間」とは何なのか。この取材を通して、僕の頭の中にむくむくと好奇心が湧いてきたのだ。

まずは再生医療だ。IPS細胞からさまざまな細胞を作り、病気やケガによって失われた機能を、回復させることが期待されている。実際に、目の手術も行われた。おそらく近い将来、ほかの臓器も作ることができるだろう。

いずれ人間は、なかなか死ななくなる。だとしたら、「命」とは何だろうか。そう考えるうちに、さらに追究してみたいテーマができた。「性」である。

人間には性欲がある。種の保存のための本能だ。しかし、そう話は単純ではない。

欲望は、さまざまな形で表れる。30年ほど前、僕は、現代の性をテーマに、『飽食時代の性 セックス・ウォーズ』という本を出した。

そして今、高齢化時代を迎え、今度は高齢者の「性」について取材してみたいと思っているのだ。

女性は比較的早い段階で性欲が弱くなっていく。ところが男性は、死ぬまで性欲を持ち続ける。妻にセックスを拒絶されたら、高齢男性はどうしたらいいのか。そんな新たな「性」の問題を取材していきたい。

「命」とはいったい何か? そして「性」とは? 要するに、「人間」というものに対して、僕の興味が尽きることはない。84歳のこの1年も、大忙しになりそうだ。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2018年4月20日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。