「低収入だから炭水化物中心」から脱却する方法とは?

黒坂 岳央

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

朝日新聞デジタルの記事に「低収入世帯ほど、炭水化物中心の生活で肥満や病気になる傾向」とありました。記事によると、滋賀医科大などの研究で年収が低い世帯ほど、摂取エネルギーにおける炭水化物の割合が高い傾向にあるそうです。

「年収が低いと「高炭水化物」 食事偏り肥満も」(朝日新聞デジタル)

炭水化物は価格が安く、保存性やモバイル性に優れています。収入が少ないとついつい炭水化物に手が伸びてしまう気持ちは理解できます。しかし、私は「炭水化物中心になるのは、収入が低いのが問題の本質ではない」と考えてしまうのです。このような話をすると、「今や肉や野菜、フルーツはご飯やパンより高いのだから仕方がない!」「フルーツなどはもはや贅沢品だ!」と強烈な反論が返ってきそうですが、問題は収入の多寡ではなく、知識や心の持ち方だと思っています。

一体、問題の本質とは何なのか?今回はそのことについて取り上げてみたいと思います。

貧しい人ほど肥満率が高い

私が子供の頃、社会の授業で「貧しい国の子供は思うように食べられないからこんなにやせ細っている!」と写真付きで、肋骨が浮き出した子供を見せられたことがあります。また、いじめられっ子だったクラスメートは、痩せ気味で服を脱ぐと肋骨が少し出ていたので、「やーい!アフリカに帰れ!!」というからかわれ方をしていました。私が子供の頃は「貧しい=やせ細っている」というイメージだったのです。

それが近年では貧しい人ほど太っている傾向にあることが、様々なデータで明らかになっています。数年前まで世界一の肥満国はアメリカでしたが、現在、世界一肥満の多い国はメキシコです。メキシコは国民の半数以上が貧困に悩む国ですが、国連食糧農業機関(FAO)の調査によると、メキシコの成人肥満率はなんと33%もあるのです。この結果を、「メキシコの貧しい層は脂分、塩分、糖分たっぷりのメキシカンタコスなどのジャンクフードや炭水化物を沢山食べているから」と分析する専門家もいるのです。もはや「貧しいから痩せている」ではなく、「貧しいから肥満になる」という傾向は世界的に起こっていることなのです。今回の新聞記事の中でも「炭水化物のとりすぎで、生活習慣病や肥満を招きやすい」といっていますから、我が国日本でも同じ状況なわけです。

健康は知識と心が作るもの

さて、「収入が少ないと肥満の傾向にある」というと、「貧しいから炭水化物中心になってしまうのは致し方がない」と考えてしまうのではないでしょうか?事実、健康を得るためには、「ものすごくお金がかかる」と思っている人はとても多いようです。しかし、本当に健康を得るために必要なのは高額な資金などではなく、「知識と健全な心」と私は思います。

以前、アゴラで書かせて頂いた『お金がなくなって真っ先に食費を削るから余計に貧しくなる』という記事でも言ったのですが、健康を得るための食事は豪華でなくても問題ありません。実際、私自身が極貧生活をしていた頃は月1万円以内の予算で、とても健康に生活をしていました(詳しくは記事をご覧ください)。しかし、私がやっていたような玄米や大豆を中心とした食生活は、お金はかからない反面、栄養や健康の知識は必要です。食費月1万円以内生活をしていた頃は、かなりの本を図書館で読みあさり、信頼のおけるデータなどを見て知識を蓄えたものです。ですので、専門家になるほどでなくても、最低限の栄養や健康についての知識は必要だと考えます。これが「健康になるには知識が必要」と考えている理由です。

それでは次に、「健康になるためには健全な心も必要」と考える理由についてお話をします。「貧すれば鈍する」という言葉がある通り、十分な収入がないと将来不安から健全な発想が出てこなくなってしまいます。「収入が十分でないからこそ、まずは健康的な食生活インフラをしっかり整えて、資本である身体の健康を確保して仕事に励もう!」というのが本来持つべき考えだと思います。

しかし、心が健全でないと、「少しでも出費を削るために、とにかく食費をカットしよう…。」という発想になってしまうわけです。お金を節約したいあまりに、食事が炭水化物中心となると当然栄養が偏るので健康を蝕まれてしまいます。そしてそれが続くとおいしくないものや、新鮮でないものばかりを食べていることで更に心が貧しくなり、心の安定を取り戻すために極端に甘いものや安くて沢山食べられる炭水化物に走ってしまい、結果的に肥満や病気を呼び込む事になる負のスパイラルに陥るわけです。

健康は日々の食生活をコツコツ積み上げていくもの

炭水化物中心の食生活を送っている人に持ってもらいたい考え方の一つに、「健康はコツコツ積み上げるもの」というものがあります。

これはデータによる裏付けのない主張になってしまうのですが、経済的に豊かになっている人ほど、目標に向かってコツコツ小さな一歩を着実に歩み続け、その反対にうまくいっていない人ほど「短期間で成功したい」という一発逆転発想を持っていると考えます。

なぜうまくいっている人は、目標に向かってひたむきに歩み続けることが出来るのか?それは大きなことを成し遂げるには、「日々の地味で絶え間ない努力を積み上げることでしか、大きな事は実現できない」ということを理解しているからだと考えます。イチロー選手のあまりにも有名な言葉に「いま、小さなことを多く積み重ねることが、とんでもないところへ行くただひとつの道なんだなというふうに感じています」というものがあります。あのイチロー選手のようなとんでもないスーパースターでも、努力とは積み上げるものだと言っているわけです。

これは健康にもまったく同じことが言えます。今日の健康は、昨日までの食生活の小さな一歩を積み上げた結果です。「健康になるための小さな一歩を着実に積み上げる」、という、毎日の食生活を大切にする発想が必要です。そうすることで、炭水化物中心の生活から脱却する手段とするわけです。

低収入だから安いものしか買えない?

「自分は収入がないから…」と諦めの気持ちで、スーパーやコンビニの食品棚から安いパンやご飯ばかりを取っていないでしょうか?漫然と日々の食事を重ねる“前”にまずは図書館へいって健康になるための知識を蓄え、日々健康になるための食習慣を継続する、そうすることで炭水化物ばかりを食べて健康を害することはなくなります。必要なのは大金ではなく、「健康になりたい」という意欲であり、決意の方なのです。

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。