ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会の開催まで、早いもので1年半を切った。大会の組織委員会は、きょう23日正午から、大会ボランティアの募集を開始するという。
2015年の前回イングランド大会は、日本代表が、強豪の南アフリカを破る“史上最大の番狂わせ”を演じる大健闘。五郎丸歩ら代表選手の社会的注目度が高まり、日本国内で久々のラグビーブームが巻き起こったが、その後は尻すぼみになったことは否めない。五郎丸選手が海外移籍にしたことに加え、国際大会のスーパーラグビーに参戦した代表チーム(サンウルブズ)が初年度は15試合で1勝、翌年は2勝するのがやっとという不振。再び世界との壁をみせつけられたこともあり、ブームも沈静化してしまった感はある。
そういうなかでのボランティア募集。試合会場での運営サポートや、来場者らの案内などを担当するが、全国12の開催都市で1万人を募集する予定。ブームが落ち着いた中でどこまで集まるのかやや懸念もあるが、先日、旧知の組織委関係者は楽観的だった。トップリーグの総入場者数が過去3年、40万人以上であることを考えても、ラグビーファンを中心に1万人は確かに集まるのは難しくないと私も思う。
ただし、大会開催後にラグビー界が有形無形のレガシーを日本社会に遺し、野球、サッカーに匹敵するプレゼンスを確固たるものにする意味では、ラグビーファン以外にどこまで幅広い層が参画できるかがポイントになるのではないか。
ボランティアはたしかに無報酬だが、動機付けがポイントになる。戦後の日本は、夏季五輪を1度、冬季五輪を2度、サッカーW杯を1度開催した経験があるが、そのときのボランティア運営者、参加者らの証言は当然参考になるだろう。東京オリンピック組織委員会の公式サイトにある国内外のボランティア経験者のインタビュー連載は、たしかに参考になるが、オフィシャルなサイトだけでなく、ネット上には個人ブログで思い思いに発信しているのもみつけられる。
たとえば、この長野のときの国際放送センターで資格認定カードの発行業務をしていたという女性のサイトは、ブログサービスが普及する以前のようだが、それもまた手作りのリアルさを醸し出している。「国籍、人種、宗教が異なるたくさんの人々と出会い、語り合うことができました」と活動を振り返っているが、その後にも活かせる人脈は、ほかの国際大会のボランティア全般にも共通する“報酬”のひとつだろう。
視野を広げたい学生にとっては大きなチャンスであることは間違いない。私の知人の起業家も(ボランティアではないが)学生時代に長野でメディアの通訳をつとめた経験からスポーツビジネスの世界をより具体的に志すきっかけを得たというのを聞いている。
はたまた逆にシニアの活躍もあるのではないか。高齢化が進む日本での開催とあって、現役時代に海外勤務を経験した元商社マンや、夫に同行して語学力や外国人とのコミュニケーションに慣れた奥様といった“高スペック”シニアが活躍するというのも面白いかもしれない。
大会後にまた語られるボランティアの物語、2019年ラグビーW杯版はどのようなものであろうか。