アリタリア航空は2002年から赤字経営が続いていた。昨年当初、イタリア政府は6億ユーロ(786億円)を投入しているが、5月に事実上破綻した。1946年に営業を開始して今回が2度目の経営破綻であった。
その後釜としてイタリアを代表する航空会社になろうとしているのがエア・イタリー(Air Italy)である。同社は1963年創設の旧社名メリディアナ(Meridiana)である。2017年9月にカタール航空が同社の49%の株を取得して経営の再建に乗り出し、エア・イタリーと名前を変えている。現在、年間利用客は250万人であるが、2022年までに1000万人の利用客の獲得を目標にしているという。その為に1500名の従業員の増員を予定している。そして2020年までに50機を新たに増やす計画だそうだ。
航路もミラノ・マルペンサからニューヨーク、マイアミ、バンコックなども加えて50路線を新設する計画だ。
CEOのフランチェスコ・ビエランテは「エアーイタリーがイタリアを代表する航空会社に成長することを目標にしている」と述べている。
アリタリアが経営危機に陥ってから2013年にアブダビのエティハド航空が49%の株を取得した経緯もあったが、最終的にエティハドは経営から撤退している。カタール航空はアラブ首長国連邦のどの航空会社もライバルと見做している。エールイタリーの経営参加によってエティハドが出来なかったイタリアの航空業界を支配することにカタール航空は関心をもっているようだ。
一方のアリタリアは現在政府の管理下になって売却先を探しているが、先のイタリア総選挙の後を受けて新政権が誕生するまで売却先は決まらないと予測されている。
今回の総選挙で最大の議席数を確保した政党五つ星運動が他党と連携して政権に就くと売却問題は更に難しなりそうだ。何しろ、五つ星運動は売却に当初から反対しているからだ。なお、買収に関心のある航空会社は9月21日までに買収案を提示することになっていたが10月16日まで延長された。
当初、ライアン航空が買収に関心を示していたが、大量のパイロットが他航空に移籍して大幅なフライトキャンセルを余儀なくさせられて、その回復に全力を注ぐということでアリタリア航空の買収は見合す方向にある。
次にルフトハンザが関心を示していたが、買収の為の前提条件として要求していた大幅な人員削減にアリタリアの管財人の方でそれに応じる姿勢はあまりないようで交渉は難しくなっている。しかも、ルフトハンザは3億ユーロ(390億円)を投入する予定であるが、管財人の方は5億ユーロ(655億円)を要望しているという。
これに対抗して買収に関心を示しているのはイージージェット、エールフランスそしてデルタである。デルタが意外と買収に可成り興味を示しているというのだ。その理由は米国人の外国旅行で多額の収入をもたらす国の一つがイタリアだからである。昨年のイタリア市場からデルタにもたらした売上は30億ドル(3200億円)以上だったそうだ。
イージージェットが関心を示しているのは新型飛行機の購入と新しいフライト路線の開発も必要となるが、同時にアリタリアの路線を踏襲して長距離のフライトが可能になるということで買収に関心をもっているようだ。
また、アリタリアの危機を利用してイタリア市場での進展を狙っているのがスペインのアイル・エウロパ(Air Europa)である。同航空はフランスへのブドウ狩りでスペイン人をフランスに連れて行くバスの経営から航空業界に進出したファン・ホセ・イダルゴが一代で築き挙げた航空会社である。スペイン・マドリードからローマ、ミラン、ベネチアの路線でのフライト本数を増やしている。
アリタリア航空より前の2012年に倒産したハンガリーのマレーヴ航空、2001年のベルギーのサベナ航空、そしてスイスのスイス航空はサベナと共倒れする形で倒産した。何れも国を代表する航空会社であった。格安航空が登場して、従来の一般航空が存続して行くには価格競争などが厳しくなって現在どこも航空会社の経営は難しくなっている。
ローマ法王の外遊には常にアリタリア航空が利用されているが、同航空が経営危機から立ち直るにはまだ相当の時間がかかりそうだ。