人気アイドルグループのTOKIOのメンバー山口達也さんが、女子高校生に対し強制わいせつの罪で書類送検されたという衝撃事件が起きました。
この件に関し、どのような法的措置がとられるかまだ分かりませんが、既に示談も成立し、被害届も取り下げられていることから、おそらく起訴猶予となるのではないでしょうか。あとは、被害にあわれた女子高生が、静かな環境で心の傷の回復につとめられることを願うばかりです。
さて、今回の事件と共に、何度も取り上げられているのが、山口達也さんとアルコールの問題です。
離婚会見の際にも「仕事や趣味のサーフィン、お酒の付き合いなど自分のやりたいことを優先してしまった。」
と語っておられましたし、周囲の方々も、度々山口さんの飲み方に忠告を与えていたようです。
また本日の会見でも、ご自身の飲酒について話しておられましたが、会見を見て、あくまでも私の個人的見解ではありますが、山口さんはアルコール依存症の診断と治療を受けた方が良いレベルだと思いました。
今日は私が何故そう思ったか、そのポイントをお伝えしたいと思います。
まず一つ目に、「事務所の勧めで、肝臓の不調で入院した」とのことですが、これが事実なら、周囲の人は入院が必要なレベルと判断したと思われます。ご本人は、「アルコール依存症まではいっていないと思っている」とおっしゃっていますが、依存症に罹患すると、殆ど全員が「そこまでいっていない」と否認することが、まさに病気の症状だと言われています。
これは私も経験があるので良く分かりますが、自分でも問題があると、うすうす分かっていても、それを認めてしまうことが何ともいえず恐ろしいのです。その位、依存症が自分の一部になってしまっており、問題を認めそれを手放さなくてはならないとなると、今後何を支えに生きていったらよいのか?自分の中の「核」を失ってしまうような、自分が自分でなくなってしまうような恐怖感があります。
そして依存症には恥の概念がつきまといます。
依存症者は、自分が何をやらかしているか、自分が一番良く知っており、自分自身を恥じています。
だからこそ隠そうとして、否認が生まれるのです。
また次に、退院してきた日、これが事件のあった日となるのですが、肝臓が弱って1ヵ月入院した来た日だというのに、その日、昼頃からヒマな時間があり、そこから飲みはじめ、焼酎を1本空けてしまい、酩酊状態となったとのことなのです。
一般の方々が聞いたら、これは理解できない行動ではないでしょうか?
しかし、これもまさに依存症者あるあるで、刑務所から出所した薬物依存症者が、その日に覚せい剤を打ってしまったりと、無理やり管理された環境に一定期間押しこめても、それは何の効果もないのです。むしろ抑圧された分、自由になると歯止めが効かなくなってしまうのです。
また、ご本人にのみならず、周囲の方々の良くある間違った対応が会見でもありましたが、会見の最後の方でどこかの記者さんが「今後お酒はお酒はどうされますか?」と尋ねられました。すると山口さんは「今は飲まないと決めています」と答えられました。
この会見の最大のポイントはこの場面にあったと思っています。
ここにもし、依存症の知識のある記者さんがいらしたら、「自力ではやめられないのではないですか?治療を受けるべきではないでしょうか?」と言って欲しかったです。
そして、残念なのは全体的に「依存症」を貶めるような扱いであったことです。
周囲の記者さん達は、山口達也さんに依存症というラベルを貼りたがっており、山口さんの方はラベリングされまいと攻防していたように見えました。
これからは、むしろ「依存症かもしれないので治療を受けます。」と、当事者が言いだしやすいような社会になって欲しいと思います。そしてこの報道により、アルコール依存症に罹患した方々に対する誤解や偏見が生まれないよう、細心の注意をメディアは払って欲しいと思います。
もし私が記者であったなら、きっと山口さんにこう尋ねます。
「山口さん、お酒に問題があることを真摯に認め、依存症の診断と治療を受ける勇気はお持ちですか?」と。
真の再犯防止は、病気を認め、治療に向き合うこと。
それは病気に逃げたわけでも、罪から逃れることでもありません。
山口さん、今こそ治療に向き合って欲しいと願っています。
そして、周囲の方々メディアの方々も、どうか治療に繋がるような後押しをお願い致します。
編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年4月26日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。