甘さ1.5倍、皮ごと食べられる流通量0.01%の国産バナナの実力

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

日本は独自のガラパゴス進化を遂げる国です。例えばガラケー、ギフト文化、そしてフルーツ等がこれにあたります。日本では海外に存在しない変わった品種や高品質のフルーツがたくさんあります。その一つがなんと、「皮ごと食べられるバナナ」!先日、日本農業新聞の記事で大きく取り上げられていました。

今回は皮ごと食べられるバナナは、どんな点がユニークなのかをご紹介します。

99.9%海外産に頼るバナナ

私たちがスーパーなどで日常的に購入しているバナナはその99.9%が海外産です。総輸入量は約110万トンで、その内約8割がフィリピン産となっています。日本人にとっては「バナナ=フィリピン産」という構図が出来上がっています。ちなみに余談となりますが、世界のバナナシェアトップはインド(シェア26.04%)、次点で中国(10.33%)、そしてフィリピン(7.78%)という並びで、世界全体で見るとフィリピン一強というわけではありません(数字の出典はFAOSTAT 2014年より)。そしてインド産のバナナはほとんどが自国消費しており、日本に輸出されていませんので、「バナナ=インド産」というイメージがないのは当然なのです。

さて、日本人の口に入るバナナの99.9%を海外産に頼っているのですが、実はわずか0.01%のバナナは純国産なのです。気になる産地は沖縄県と鹿児島県と岡山県です。その生産量は極めて少量であり、全国でたったの200トン程度しかありません。輸入バナナは100万トン以上あるので、その差はまさに圧倒的です。

日本はフルーツ大国ではありますが、バナナについて言えば輸入に頼らざるを得ない状況です。その理由は簡単でバナナは寒さに弱く、日本でバナナを大量生産しようとすると、温度管理をするための大規模設備が必要となり、コストがペイできないためです。

海外産フルーツの限界

海外産フルーツには価格が安い、安定して入荷するというメリットがあります。バナナについても、フィリピン以外に多数の国から輸入をしているので価格が急騰することもありませんし、年中スーパーに置いています。

しかし、もちろん海外産には弱点もあります。それは熟成度が低いということと、薬品や化学薬品を使って栽培されているという点です。バナナは黄色に熟した後は、あまり日持ちがしません。しばらく置いておくと「シュガースポット」と呼ばれる黒い斑点が浮き出て、そのタイミングが食べ頃なのですが枝になったまま完熟を待っていると、船便での移動に時間がかかるために持たないのです。そのため、バナナに限らず、マンゴーなどでも実が青く、熟成度の低い状態で日本に入ってきます。また、長い船旅で果実が傷まないように薬品が散布されますから、皮を食べることは安全性を考えると推奨されません。

未熟な状態で収穫し、薬品散布があるのは海外産フルーツの宿命なのです。

国産バナナだから皮ごと食べられる

そんなこれまでのバナナ事情をガン無視して登場したのが、皮ごと食べられる「ともいきバナナ」です。

ともいきBIO(バイオ)は18日、独自の凍結解凍技術で育苗し、国内で栽培できるバナナを開発したと発表した。

引用元:日本農業新聞「バナナ 皮ごとパクッ 寒さ・病害虫に強く無農薬 ともいきBIOが販売

とあります。気になるのが「凍結解凍技術」という部分です。

普通、バナナは南国で栽培するものなのに、凍結させるとはどういうことでしょうか?バナナは苗から育てると、温度が低い環境では成長が止まってしまいます。しかし、”バナナの種子”の段階で凍結させ、「氷河期」を種に体験させることにより、栽培力が高まり、より甘く、より早く育つようになるというのです。通常のバナナは苗を植えてから1年半から2年必要なのに対し、このともいきバナナはわずか9ヶ月で収穫ができ、実に半分程度の期間で育つのです。また、通常のバナナの糖度は15度前後であるのに対し、20度以上(ものによっては24度前後)ととても甘いバナナです。無農薬で育てているので、皮ごと食べられるという従来のバナナでは考えられないできになっています。

私はまだともいきバナナは食べたことがありませんが、同じような皮ごと食べられる国産バナナの「もんげーバナナ」を食べた経験があります。ともいきバナナともんげーバナナは名前は違えど、同じ凍結解凍技術で育てたブランドバナナです。私が食べたもんげーバナナは岡山県産のブランドバナナを指します。さて、フィリピン産を始めとした海外産のバナナは皮が分厚く、繊維と渋みが多くてとても食べられませんよね?しかし、国産バナナは皮が薄くて、食べても異物感なく食べられます。皮ごと食べられる、というのはなんとも不思議な感覚がしてしまうのですが、実際においしく問題なく食べることが出来ました。ともいきバナナは食べたことがありませんが、おそらくもんげーバナナと同様に皮が薄く、まるごと食べられるものと推測しています。

国産バナナがメジャーになって欲しい

皮ごと食べられる国産バナナはまだまだマイナーで、生産量も極わずかです。値段も1本500-600円以上しますし、入手経路は数少ないネット通販で買うなどかなり限られています。しかし、皮ごと食べられるフルーツのポテンシャルは計り知れません。当店でも扱っている種なし皮ごと食べられるシャインマスカットは、毎年すさまじい人気を博していることからも「フルーツは皮むきや種取りが面倒くさい」という果物離れを起こしている人たちを呼び寄せる力があるのではないかと思っています。特にバナナは日本人の人気ナンバーワンフルーツ(過去記事日本人の好きな果物ランキング、1位のフルーツはやっぱりこれ参照)ですので、より甘く、皮ごと食べられるとなれば爆発的な人気が期待できます。

一日も早く国産バナナがメジャー選手になってほしいと願っています。私の店舗、肥後庵でも取り扱いたいと思ってしまいました。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。